CX-3と往く巡礼の旅 その8 - 西国十四番 園城寺(三井寺)観音堂

どうもこんにちは。

四月も下旬、桜の季節はとうに過ぎ、新緑の季節へと移りゆく頃にお伺いしました。

正式名称は長等山園城寺(おんじょうじ)と言いますが、もっぱら三井寺(みいでら)として有名で、滋賀県のお寺の中でも有数の名刹です。

散策と合わせて楽しめるくらいの広々とした境内は単なる観光目的でも充分目玉になりますし、金堂にはずらっと仏像も並んでいますが、平安以降の古い仏像たちを手が届く距離でじっくり拝見することができますから、仏像好きの方にも超オススメです!

園城寺(三井寺)ってこんなお寺さん

その他公式サイト記載の参加霊場

  • 西国薬師四十九霊場 第四十八番札所(水観寺)
  • 湖国十一面観音霊場 第一番札所(微妙寺)

水観寺、微妙寺は共に三井寺境内に設けられた別院である、三井寺五別所のひとつです。

見どころたっぷりの三井寺
見どころたっぷりの三井寺(拡大すれば字も読めますよ)

滋賀県大津市、琵琶湖南西の長等山中腹に広大な敷地を有する三井寺は、正式名称を「長等山園城寺(おんじょうじ)」といい、天台寺門宗の総本山です。平安時代、第五代天台座主・智証大師円珍和尚の卓越した個性により、天台別院として中興されました。以来今日まで続く千二百年以上の歴史の中で、源平の争乱、南北朝の争乱等による焼き討ちなど幾多の法難に遭遇しましたが、智証大師への信仰に支えられた人々によって支えられつつ、苦難を乗り越えてきた様から、「不死鳥の寺」としても知られています。

三井寺公式サイトより引用

大化改新の大海人皇子としても有名な天武天皇の時代に創建されたとされ、天智天皇の念持仏(私的に礼拝するための仏像)を御本尊とし、園城寺の名も天武天皇により与えられたという由緒正しすぎるお寺です。

天台宗の総本山である比叡山延暦寺とも近く(歩いて行けるとかじゃありません)、天台寺門宗という宗派であることから、お仲間さんなのかな? ……などと思っていたワタシが馬鹿でした。

創建から時を経て9世紀には延暦寺の別院となったらしいのですが、その後宗派内の争いにより天台寺門宗として独立したとのこと。ちなみに延暦寺はこの対立を語る上では天台宗山門派と呼ばれますが、公式には天台宗としか書かれていませんね。

でも、単なるケンカ別れというだけなら良くある話ですが、この両者、長きにわたり世俗の権力闘争とも絡みつつ抗争を続けてきたようです。しかも山口組の抗争とかが可愛く見えてしまうくらいに血で血を洗っております。細かいことは省きますが、Wikipediaのこの一文を掲載しておきましょう。

園城寺は平安時代から戦国時代までに合戦・焼き討ち・火災などで23回も炎上しているが、うち14回は延暦寺僧兵らによる焼き討ちであった。

比叡山って信長による焼き討ちが有名で、一般的には同情的な見方をされますが……もしかして、因果応報?

ちなみに焼き討ち的には園城寺はやられっぱなしですが、揉めまくった結果焼かれているわけですので別に被害者側ということでもないですけどね。

歴史を辿るとちょっとえげつない感じでしたが、それだけ日本において平安の世から近世まで常に歴史の表舞台に関わり続けてきたお寺だとも言えます。良きにせよ悪しきにせよ、日本の歴史は戦いの歴史であり、歴史と宗教を分けて論じることができない以上、仕方がないことなのかも知れません。名だたる大寺院なんて、そもそも権力者との関係がなかったらほとんど成立しなかったでしょうし。

とにかく、現在は緑溢れる広大な敷地に桜や紅葉、さまざまなお堂、仏像、さらに琵琶湖を見下ろす高台からの景観と、見どころずくめのお寺ですので、みなさまどうぞお参りくださいね。

正式名称

長等山園城寺(ながらさんおんじょうじ)

宗派

天台寺門宗(総本山)

御本尊

弥勒菩薩

弥勒菩薩は天智天皇の御念持仏と伝えられており、絶対の秘仏とされています。

御詠歌

いで入るや 波間の月を 三井寺の 鐘のひびきに あくる湖

札所本尊真言

おん はんどま しんだまに じばら うん

詳しくは以下のサイトをご覧ください

ロケーション&CX-3的オススメ度

住所 : 滋賀県大津市園城寺町246
(下の地図の14番です。拡大してご覧ください。左上のでインデックスが表示されます)

CX-3で訪問オススメ指数 : 80%

滋賀県ですが、京都市中心部あたりからでもクルマで30~40分程度で行けます。もちろん京都市内の渋滞につかまらなければですが。また、京都からのルートとしては国道1号線を通って山科から浜大津に抜けるのが最もポピュラーですが、京都市の中部以北あたりからなら、左京区白川通から比叡山方面に行く通称「山中越え」を通って行くのもクルマ好きの方なら楽しいと思います。(下の地図、上側のルート)

このルートの途中には延暦寺へ向かう比叡山ドライブウェイの入口もありますよ。

さて三井寺ですが、広々とした駐車場がありますので、桜や紅葉のシーズンなど特に混雑するとき以外ならクルマでの参拝も便利です。駐車料金が参拝料と別に500円取られますが、参拝料と合わせて1,100円。充分その価値はありますので気にしなくて良いと思います。

駐車場は広いです
駐車場は広いです

電車でも京阪石山坂本線の三井寺駅から歩いていけますが、徒歩圏内にこれといった他の観光名所がありませんので、やっぱりクルマの方が便利だと思います。

クルマなら西国巡礼的には石山寺や法正寺をあわせて無理なく巡ることができますし、上記のような歴史に思いを馳せつつ、延暦寺とセットで参拝するのも……いいのかな?w

訪問記

桜が終わった後の平日に伺いましたので、駐車場も空いています。

でもさすがですね。それなりに多くの観光客が来られています。紫式部に縁が深いお寺ということもあるようですので、大河ドラマ「光る君へ」効果もあるのかも。放映記念として、2024年中二期に分けて「三井寺と紫式部」というテーマの特別展示が行われているようです。

それにしてもこの時期の平日でこのくらいの人出があるのなら、やはり週末や観光シーズンはかなり混雑しそうです。あくまでも観光として桜や紅葉を楽しむのなら仕方ありませんが、落ち着いて参拝を堪能するならシーズンは外した方が正解かもしれませんね。清水寺とかなら、もはやいつ行っても混雑しているのでどうしようもありませんが、このあたりのお寺なら日を選べばゆったり楽しめるでしょう。

さて、駐車場にCX-3を駐めると、おっちゃんが寄ってこられて500円を支払います。駐車場前には大きな売店・食堂があります。単独のお寺の売店としては結構大きいように思います。

ソウルレッドの向こうに見えるのが売店です

そして山門をくぐると拝観受付があり、御朱印の案内もされています。……いっぱいあるなw

三井寺御朱印案内
三井寺御朱印案内

ワタシは基本的には巡礼で初めて参拝するときは、その札所の御朱印のみをいただくようにしていますので、三井寺の場合、目指すは観音堂ということになります。っていうか、全部もらってたらいくらかかるんだ……。

境内の案内図を見ると観音堂は山門からは金堂からぐるっと反時計回りでまわるとさいごに到着できる場所にありますね。(↓ 上で掲載したのと同じ写真です。案内図左下に見えるのが観音堂です)

というわけで、拝観開始です……が、受付の向かいにいきなり立派なお堂があるじゃありませんか。

立て札をみると「釈迦堂(食堂)」とあります。食堂は「しょくどう」ではなく「じきどう」と読みます。ざっくり言うと僧や衆徒のための食事の場みたいなものらしいですが、今は室町時代に作られた釈迦如来像が祀られるお堂となっています。

釈迦堂(食堂)
釈迦堂(食堂)

それにしても立派なお堂ね、と思っていたらそれもそのはず、重要文化財でした。広い境内の山門の脇にいきなりこんなお堂があるとは……やるわね! 三井寺!

そして、続く石段を登っていくと三井寺全体の本堂でもある「金堂」が見えてきます。今度は国宝ですってよ……。結構スゴいなこのお寺は、と今さらながらに思ったワタシです。

で、参拝して中に入ったのですが……ここが圧巻でした。

撮影は禁止なので写真はありませんが、御本尊こそ秘仏ですので観ることはできませんが、平安時代以降の仏像が数十体ズラッと並んでいます。特にケースに入っているわけでもなく、手が届く距離で眺めることができます。ここだけでも拝観料の価値が充分にあるなと思いました。

そして金堂脇には鐘楼が。

お寺ですから鐘があるのは当然ですが、こちらの鐘も並じゃありません。「三井の晩鐘」と呼ばれる日本三名鐘のひとつとして名高い鐘だということらしいです。特に音色が素晴らしいとされていて、日本三名鐘の中でも「音の三井寺」と称されています。この鐘楼も重要文化財なんですって……。

ちなみにお能の演目で、中秋の名月の三井寺を舞台に親子の再会を描いた名曲「三井寺」がありますが、そこにもこの鐘が登場します。

で、この鐘、撞けるんですってよ! ひと撞き800円ですけど。

さあ、ここまで見どころしかない三井寺ですが、実は今回もお仕事中。昼休み代わりに伺いましたので一時間くらいしかありません。とにかく巡礼札所である観音堂にたどり着かないといけませんから、ここからはちょっと流し気味に……。

新緑で彩られた石畳の路を歩きつつ、一切経蔵、唐院と三重塔、微妙寺、毘沙門堂を軽く流す感じで拝観を進めます。この軽くながしたところにも重要文化財やら国宝やらが色々あるようで……これは一日でしっかり堪能するならかなり時間かかりますね。まあワタシの場合は場所的にはいつでもうかがえる程度ですので、またこの辺はあらためてということで。

なんか路傍にいくつか佇んでいた童地蔵がとっても存在感あり。夢に出てきそうです。もちろん誉めてます。

そうしてとうとう観音堂が近づいてきました。ちょっと長めの石段です。

観音堂に向かう石段
観音堂に向かう石段

石段を登り切ると見晴らしの良い広い空間が広がっており、広場の外側にせり出すように造られた観月舞台があり……そして広場の奥にありました! 観音堂!

まず、観月舞台ですが、眺望はまあ絶景と言うほどのことはなし。確か標高100メートルそこそこくらいだったと思いますから、大パノラマという訳にはいきませんね。ただ桜の時期などはとてもキレイらしいですし、名前も「観月舞台」ですから、琵琶湖を眺めるというよりは、琵琶湖を背景に花や月を楽しむというのに向いているような気がしました。

1枚目の写真をご覧いただくと、床下の部分が懸造りと呼ばれる、崖などの斜面に長い柱を使って建築する技法が使われているようにも見えます。ほら、清水寺とかこんな感じでしょ? でもこれは平面の石造りの土台の上に建てられていますので、むしろ良い眺めを楽しむためにこの技法を使って高い位置に舞台を建設したという感じですかね?

そして、お待ちかねの観音堂。

立派で重厚感のある本堂です。お堂自体は江戸時代に建てられたものだということで、県指定文化財にとどまりますが、千社札や奉納された額、絵馬などと合わせて築かれたこの雰囲気は重要文化財のお堂などにも引けを取りません。(素人の個人的感想)

三井寺 観音堂

そうなんですよね。西国三十三所の霊場だけあって、長きにわたって多くの人々の崇拝を受け、願いを聞き届けてきた、そういう雰囲気があるのです。この三井寺の他のお堂(というよりだいたいのお寺のお堂)はとにかく厳かで、参拝者は外から眺める傍観者のようなイメージですが、この観音堂は参拝者の信仰の積み重ねがそのままお堂の空気感を醸成してきたような感じがするのです。

お堂の中には御守りなどもいっぱい並べられています。でもそんな光景も自然に感じます。

それにしても、この観音堂のまわりには、手水舎、(さっきのとは別の)鐘楼、本堂とは別の百体観音堂などが配置され、上で触れた観月舞台に展望デッキ、さらには小ぎれいなカフェまであります。何というか一式揃ってます。もうこれ、別のお寺ってことでも良いんじゃなかろうか?w

そういえは、他のお堂や参道のあちらこちらで「西国三十三所の御朱印は観音堂だからね!」といった趣旨の注意書きを見ました。やっぱりそれ目当ての参拝客が多いんだろうなと思うと同時に、「観音堂が西国の札所」だということを知らずに来る人も多いのかなと思ったりしました。ピンポイントの参拝ならともかく、巡礼をするならそのくらいわかってろよ、というのが正直なところですねぇ。

御朱印

観音堂にて無事に御朱印をいただきました。

西国三十三所 第十四番札所 三井寺(園城寺) 御朱印

ありがとうございます。

さいごに

大きめのお寺さんだとはわかっていましたが、想像以上の見応えでした。同じものが京都市内にあったら季節に関係なくエラい混雑だろうなと思いました。失礼ながら滋賀だからこそこれだけの名刹をゆったりと拝観できるのでしょう。

滋賀にもかつて都がありました。(五年くらいしか保ちませんでしたが……)また平安の都・京都と隣接している地理的要因からも歴史的にも重要な社寺が多くあります。その中でもこの三井寺は延暦寺も絡んで華々しい政争の場面にしばしば登場します。一般的には延暦寺が圧倒的に目立ってますけど。

そんな三井寺も、そして延暦寺も今の時代では争い事の対極にあるような存在として多くの人たちの拠り所となっているようです。願わくばそのままずっとそんな感じで行っていただきたいものですね。

本文中でも触れましたが、三井寺は建物、仏像、その他美術品などの国宝、重要文化財なども多いですね。国宝の仏像は秘仏にされているものも多く、いつでも観ることはできないので残念です。ただ、延暦寺は世界文化遺産に入っているのに、この三井寺は入っていません。

もちろん延暦寺がそれに相応しいのは間違いありませんが、これは「古都京都の文化財」として名を連ねているものです。延暦寺は基本的には大津市なのですが、一部京都市左京区でもあるのですね。

過去の歴史を考えれば三井寺側は内心悔しかったんじゃないかなぁなんて妄想したりしますが……いやいや、悟りを求めて日々精進されているお寺のみなさんはきっとそんな俗っぽいことは思わないはず……たぶん。

でも、三井寺の観音堂ももしあれが国宝とかだったら、あんなに色んな奉納額や絵馬、千社札などで彩られた魅力ある空間になっていなかったかもしれません。そう考えるとご大層なものに認定されるっていうのは良いことばかりじゃないのかも知れないなとふと思いました。

とにかく見応えがあり、そして参拝し甲斐のある素晴らしいお寺さんでした。

それではまた。

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