Written in YC103-08-06
500年前、インタキ人は故郷の惑星で簡素な生活を送っていた。彼らにとって空は神秘であり、工業化以前の技術を用いてゆっくりと発展してゆくばかりだった。やがてガレンテ人が到着し、彼らを瞬く間に現代化した。最初は圧倒されていたインタキ人だったが、すぐに順応し、1世紀も経たないうちに熟練した宇宙旅行者となり、ガレンテの統治機関の活発なメンバーとなった。彼らはすぐに公正なヒューマニストとしての評判を確立し、巧みな交渉術を持つ賢いビジネスマンとして、ガレンテ人の生活様式に完全に適応したのだった。
カルダリが連邦から脱退した後の社会的騒動は、インタキ人に深い影響を与え、彼らの多くはカルダリに同情するだけではなく、支持するようになった。連邦の厄介な官僚主義的支配は、カルダリと同様にインタキ人にとっても重くのしかかるものだったのである。当然のことながら、ガレンテ人は、未成熟な連邦が完全に分裂してしまうのを防ぐために、これらの氾濫分子に対して厳しく対処することを余儀なくされた。
いくつかの小さな暴動は別にして、連邦は速やかにインタキ人を鎮圧した。体制の安定にとって最大の脅威とみなされた者は逮捕され、追放された。そのうち何人かはカルダリ側についたが、追放者の大部分(合計約5000人)は連邦領の外れの広大な未知の領域へと出ていった。彼らはそこで、宇宙ステーションを自分たちの新たな住処として無秩序に建設していった。連邦は彼らが惑星や月に入植することを全面的に禁じていたのだ。
やがて、追放者たちはより組織化され、アステロイド採掘やブラックマーケットでの交易を通じて力を増していった。彼らはゆるやかに結びついた組織を形成し、それをインタキシンジケートと呼んだ。シンジケートはいかなる意味においても政治的なものではなく、各加盟ステーションは完全な自治権を享受しているが、彼らは経済的な情報を共有し、セキュリティ上の事案において互いに助け合っている。
インタキシンジケートの領域は、人種、政治的信条、法的地位にかかわらず、すべての人に開放されている。シンジケートはそれほど裕福でも強力でもないが、帝国の周辺地域で重要な機能を果たしており、あらゆる人々にとって安全な避難所であり、何でも売買できる場所となっている。連邦はいまだ憧れの地である一方で、シンジケートの領域は何らかの理由で連邦に入国できず取り残された移民者を受け入れており、そうすることで徐々にその規模と重要性を増している。
各シンジケートステーションには、ステーションとその周辺環境に対して完全な権限を持つ独自の長がいる。これら長達は、かつてステーションの建設に尽力した人々や、彼らの子孫である。以前、シンジケートの非公式なリーダーはPoitotステーションの長であるDorn en Diabelであった。彼はカリスマ的で情熱的なリーダーであり、追放の後の混沌とした状況に秩序をもたらし、シンジケートの基礎を築いた。多くの著名なインタキ人と同様に、Diabelはアルビノであり、そのことは彼の権威に、彼の意志を貫くために必要な強さを付与することとなった。
10年前、en Diabelは不慮の事故で死亡した。つまり、彼の精神をクローンに移すことはできなかったのである。彼の長男は、父親のPoitotステーションマネージャーとしての地位を継承した。しかし、問題が迫っていた。シンジケート内のen Diabel一族のライバル達が、クーデターのために力を結集しつつあったのである。父親のような賢明な政治的資質を持たない若きGare en Diabelは、明らかに父親とは格が違ったし、同じく軟弱なPoitotにいる兄弟達も、必要な支援をすることができなかった。
しかし、Dorn en Diabelの子どものひとりはPoitotから離れて、もう五年以上になっていた。末っ子のSilphy en Diabelは、父親と激しくぶつかった後、追い出されるようにSisters of EVEに送られたのだった。Dorn en Diabelの子ども達の中で唯一、Silphyは父親の知性と情熱、そして母親の気性の激しさを受け継いでいた。
彼女のSistersでの滞在は、そもそも罰する目的でなされたものだったが、Silphyは次第にそこでの活動に熱中するようになった。彼女は初めて父親の鉄の意志から解放され、自分の好きなように自由に生きることができるようになったのだ。彼女はSantimona Sarpatiと友情を交わした。Santimona Sarpatiは有力なシスターながらも、偶然にも悪名高いサーペンティスコーポレーションのトップであるV.Salvador Sarpatiとも兄弟だった。しかし、SilphyのSistersでのキャリアが飛躍的に伸びると思われた矢先、彼女はファミリーの必死の呼びかけに応え、Poitotに帰ることを決意したのだった。
戻ったSilphyは即座に状況を把握すると、彼女の父親が図ったのと同じような狡猾で残忍な方法で、主導権を握ってしまった。まず、今後は民衆が選挙により終身の長を選出するようにステーション憲章を変更したが、en Diabelファミリーの敵対者たちはこれを彼らの弱さの表れだと考え、特に反対もなく成立した。一週間後、彼らの見解は自分たちの内の一人が長に選出されたことで裏付けられたが、その後Silphyは計画の次の段階を実行に移した。――秘密裏に入港しようとするすべての食糧補給艦を攻撃する手配をし、徐々にPoitotステーションを飢餓状態に陥れたのである。
当然のことながら、憤慨した民衆は新たな長を非難した。SilphyはSisters of EVEにおける影響力を利用して、緊急食料をen Diabelファミリーの艦で運び入れさせた。(もちろん、これは攻撃されることはなかった)こうしてSilphyは民衆の擁護者となり、長が辞任に追い込まれると、Silphyは次の選挙で圧倒的勝利を収めたのだった。敵の名声を粉々に粉砕すると、彼女は自らのPoitotステーションのリーダーとしての地位が確固たるものに至るまで、彼らを経済的にも計画的に破滅させていった。彼女は同時にen Diabelファミリーのトップとしての地位も固めた。兄弟達を外部に追いやりつつ、彼らが自分を頼り続るように、懐具合を厳しくコントロールし続けた。
さらに彼女は徐々に自らがPoitotステーションの最高指導者であると主張するようになり、民衆が持った束の間の影響力はやがて無に帰したのだ。
Silphy en Diabelが長となって数年の間に、彼女は父親が持っていた、指導者のいないインタキシンジケートの非公式なリーダーとしての地位を取り戻した。彼女の力が本格的に試されたことはないが、連邦内外でのブラックマーケットの支配を目指してサーペンティスコーポレーションと協力したことが判明すると、Sister of EVEとのつながりを失った。かつて信頼できる、良き友人であり仲間であったSantimona Sarpatiは彼女に背を向けた。Santimonaは自分の兄弟をSarpati王と呼ぶのと同じく、今ではSilphyのことを嘲るようにシンジケートのSilphy女王と呼び、彼らは仲間の人々を搾取し、侮辱しながら、お互いにおべっかを言い合っているだけだと語っている。
参考文献
この文章は下記原典を翻訳したものです。原典の著作権はCCPに帰属します。
EVE Universe – Chronicles – Silphy
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