MMORPG EVE Onlineの情報。初心者向け情報、プレイ日記やニュース、そして国家・人物・歴史・社会・文化・経済・物語などのバックストーリー翻訳。
MMORPG EVE Onlineの情報。初心者向け情報、プレイ日記やニュース、そして国家・人物・歴史・社会・文化・経済・物語などのバックストーリー翻訳。

Saaren調査ファイル 12 – Sarum Prime星系【その弐】

朝の目覚めは悪くなかった。Sarum Prime星系調査二日目の朝だ。

朝食をとりながら、昨日の外惑星帯調査のレポートをながめ、頭が完全に目覚めるのを待った。そして、今日調査に赴く内惑星帯の星図と基本情報を再確認する。

そして私は、昨日と同じように愛機「UoC Research Shuttle」に乗り込み、ステーションをあとにするのだった。

内惑星(第3~第1惑星)調査

Sarum Prime 第3惑星(Mekhios)

そしてやって来たのが、ここSarum Prime第3惑星。Sarum家の首都が置かれる、まさにSarum家の本拠地と言える惑星だ。この惑星はMekhiosと名付けられている。

Sarum Prime Ⅲ(Mekhious)
Sarum Prime Ⅲ(Mekhios)

この惑星はいわゆる温暖惑星だが、独特の大気組成の影響で、宇宙空間からは一風変わった色合いに見える。よく「金色の大地」「銀色の海」と例えられるが、実際にこの目で見てみるとまさにその通り。あくまでも印象だが、アマーの美学にとても適った色合いだと思う。かつてこの星系を開拓したSarum家が、この惑星を本拠地と定めたのも頷ける。

また、この惑星は星系内で人口も最も多く、交易面はもとより、観光地としても栄えているようだ。とかく文化面では閉鎖的なイメージがあるアマー帝国だが、少なくとも「外に発信する」という面においてはこの惑星は精力的なようだ。

惑星の繁栄を表す文明の灯
惑星の繁栄を表す文明の灯

もっとも、外の文化を取り入れるという面では、特に進歩した様子はない。これは私たちガレンテ人から見ると奇異なことに見えるし、私個人としてもそういう印象がある。しかし、自分たちの文化と伝統を守るという一点においては、決して悪いことだとも言い切れない。もちろんこれは「Reclaiming」「奴隷」というものと不可分なその内容はさて置いての話だが。

さて、このMekhiousだが。近年においてはむしろ「Mekhiosの戦い」という著名な戦争でよりその名を知られるようになった。

この戦いはミンマター、サッカー部族(人種的にはミンマター人)によるエルダーフリートの侵攻において、この惑星上空で行われた大規模戦闘のことである。詳細はNEW EDEN人類学大事典のこの項目中「帰還、そしてMekhiosの戦い」をご覧いただくこととする。とにかくアマーの継承の試練に敗れ、自殺したものと思われていたJamyl Sarumがこの戦いで奇跡の帰還を果たし、一撃でエルダーフリートを撃ち破り、NEW EDEN中を震撼させた。これにより、Jamylは伝説的名声を手に入れ、慣習にとらわれずに女帝の座についたのである。

もし、このJamylの帰還がなければ、どれほど歴史が変わったことだろうか。アマー帝国の存続すら危うかったとの見方もある。そういう意味で、まさに歴史の転換点とも言える戦いが、このMekhiosの戦いなのだ。

そして、そのMekhiosの戦いの名残が、未だにこの惑星上空に残っているらしい。私はその地点へ向かった。

Mekhios Graveyard – Mekhiosの墓場

その空間は何らかのガスで今も覆われている。そのガスの中、大小さまざまな艦船の残骸が漂い続けている。

私はその残骸の中を進む。ガスは視界を曇らせ、メタリックな惑星Mekhiosも輝きを失ったように見える。

Mekhios Graveyardを通して見た惑星Mekhios
Mekhios Graveyardを通して見た惑星Mekhios

まさに墓場。その激しい戦いを今も思い起こさせるよどんだガスの中に漂う残骸たち。しかし、その中に彼女はいた。

Empress Jamyl I_Sword of the Righteous
Empress Jamyl I_Sword of the Righteous

Empress Jamyl I_Sword of the Righteous(女帝ジャミル一世 – 正義の剣)と名付けられたモニュメントが設置されている。私は接近して碑文を確認する。

YC110年、野蛮な敵に攻め込まれる危機に瀕したとき、ジャミル・サルムは死から蘇り人々を破滅から救った。

YC105年のアマー皇位継承選抜レースでドリアム・コ・アゾールが皇位継承者に選ばれ、皇族の血脈であるジャミル・サルムはシャソル・シンの儀を行った。しかしYC110年、エルダーフリートの侵攻により神聖アマーが危機に瀕したとき、彼女は神の意志により甦る。ジャミル・サルムの聖なるフロティラは、神の力を持つ兵器でエルダーフリートを殲滅し、アマーを恐ろしい運命から解放したのである。

ミンマターのエルダーフリートをアマー帝国の領土から撃退した後、帝国から神の救済者と称されたジャミル1世は神聖アマーの女帝に就任した。その後、不慮の死を遂げ神の御許へ戻っていった女帝ジャミル1世は、「解放者聖ジャミル」とも呼ばれている。

この記念碑は、偉大な解放者である女帝ジャミル1世を記念して、メクヒオス上空の壊れた軍艦の墓地に建てられた。彼女の英雄的な行為が決して忘れられることなく、時代の流れの中で薄れ去ってしまうことがないようにと願いが込められている。

『我は希望の使者。我は正義の剣。我の声を聞くすべての者に告げる。汝がこの帝国に与えたものを、我は汝に返そう!』 – 女帝ジャミル1世、戴冠式のスピーチ、YC110年

Empress Jamyl I_Sword of the Righteous 碑文

この碑文からは、Jamylの戦果を讃えるだけではなく、その存在を神格化する意図を強く感じる。実際の所、皇族には堅く禁止されていたクローン技術によって自殺の儀式(Shathol’Syn)を生き延びたと囁かれているが、この碑文はそのような雑音をすべて消し去るものである。これは彼女自身の権威を高めるものであるのは当然だが、信仰とそれに基づく伝統を最重視するアマー帝国の威信を守る効果も持つものだ。

宗教国家というものは、その信仰によって連帯を図りやすくはなるが、その一方ですべてがその教えで説明がつくものでなくてはならない。その土台の一部の破壊は、全体の瓦解につながりかねないからだ。JamylはShathol’Synの儀式の後、機を待っていたと伝えられる。元々人気も人望もあった彼女だったが、それでも禁を破っての復活は簡単に許されなかったのだろう。それだけ宗教国家の戒めというものはやっかいなものということだ。そういう意味で、このMekhiosの戦いはまさに千載一遇のチャンスだった。

そして、そのチャンスを見事にものにした彼女だったが、その後命を落としてしまった。しかし彼女の伝説はこのモニュメントと共にずっと残り続けるのだろう。そんなことを考えながら、私はさらに接近してモニュメントを観察する。

寛容さを表すように開かれた両の腕。それに抱かれるように胸元には艦隊のホログラムが浮かんでいる。これは、彼女がこの戦いで率いた艦隊だろうか?

Jamylに抱かれる艦隊
Jamylに抱かれる艦隊……だが?

まずは殊更大きく浮かんでいるのはJamylが搭乗していたAbaddon級戦艦だろう。

Jamyl搭乗のAbaddon級戦艦
Jamyl搭乗のAbaddon級戦艦

……が、そのAbaddonが従える他の艦船のホロが、どうも私の持っている情報とは異なっているようだ。その情報とは「彼女はたった12隻のApocalypse級戦艦を従えて」戦場に現れたというものである。複数のソースの内ふたつを載せておこう。

Jamyl’s Abaddon then arrived on the scene, accompanied by the twelve Arch Guardians of the Citadel in Apocalypse-class battleships.

そしてJamylのAbaddonは12隻のApocalypse級戦艦からなるアークガーディアンを従えてこの場面に現れた。

EVE Universe – Lore – The Elder War  より抜粋

Sarum Prime – This is a breaking news report

Reports are flooding Amarrian comm channels that the royal heir Jamyl Sarum has arrived on the battlefield over Mekhios with an escort of just twelve battleships. Jamyl Sarum was killed five years ago in the Succession Trials following the death of Emperor Heideran. This is a breaking news story that we will continue to update as information becomes available.

Sarum Primeより速報です。

アマー通信チャネルに、皇位継承者のJamyl SarumがMekhiosの戦場に12隻の戦艦のみを従えて現れたとの報告が相次いでいます。Jamyl Sarumは5年前、Heideran皇帝の死に続いて行われた継承の試練において命を失いました。これは速報です。我々は今後も情報が入り次第、更新していく予定です。

BREAKING NEWS: JAMYL SARUM SIGHTED OVER SARUM PRIME(YC110.6.1)

このような情報をもって私はこの地へやって来たのだが、どうも食い違いがある。Jamylが抱く艦隊は、自身が搭乗するAbaddon級戦艦の他、12隻のはずのApocalypse級戦艦が16隻と、Armageddon級戦艦が12隻という構成だ。

モニュメントの上の方からもう一度確認してみるが、やはり間違いはないようだ。

Empress Jamyl I_Sword of the Righteous上方からの観察
Empress Jamyl I_Sword of the Righteous上方からの観察

私は手持ちの資料と、艦内からアクセスできるデータベースで調べてみたが、答えは得られなかった。もしかすると大した理由はなく「見栄え」重視でそうなったのかもしれないが、どうにもしっくりこない。なぜなら、この出来事のインパクトはJamylが「たった12隻」の護衛を伴って電撃的に現れたことにあるからだ。艦を増やせば増やすだけ、そのインパクトはむしろ薄らぐと言える。

残念ながら、この場を離れ、他の情報が入る時を待つことにしようと考えざるを得ない私だった。後ろ髪引かれる思いでこの墓場をあとにした私は、第2惑星へ。


追記 : 調査後、有識者(管理人注:ロールプレイ好きが集まるDiscordで尋ねてみました)にも尋ねてみたが、明確な答えはなかった。おおよそ、アマー帝国のことだから話を大きくしてるんじゃないか、とのことだ。ただ、これには上述の「たった12隻」のインパクトの面からも、納得には至っていない。


Sarum Prime 第2惑星、第1惑星

Mekhiosの独特な色合いに目が馴染んでいた私だったが、いかにも温暖惑星らしい第2惑星の海と大地を眺めるとやはりホッとする思いだ。

Sarum Prime Ⅱ
Sarum Prime Ⅱ

この惑星の気候は、人間にとっての快適度という物差しで測るといささかよろしくない。ひと言で言うと「高温多湿」だ。しかし、自然の動植物にとってその環境は悪くないようで、かなり豊かな生態系が構成されていたらしい。ここで過去形で述べたのは……そう、人間が増えた結果、農業としての植物栽培は盛んなものの、動物に関しては多くの種が絶滅、もしくはそれに近い状態になってしまったということのようだ。

半径7,430kmという比較的小型の惑星ながら、Mekhiosに次いで星系中で二番目、さらにアマー帝国全体で見ても人口が多い惑星のひとつに数えられることから考えて、自然破壊が深刻な問題になるのはもっともだ。今や私たちはいくらでも「他の星」を探して植民地化していくことができるからそれほど問題視はされていないが、無視はできないことだと私は思う。

そして最後の惑星、第1惑星に向かいその様子を確認。

溶岩の世界、Sarum Prime Ⅰ
Sarum Prime Ⅰ

溶岩性の惑星であり、約1,000℃の灼熱の世界……だが、地表には有人の研究ステーションが点在しているらしい。私も研究者の端くれとしてそこで研究に従事する人たちの熱意がわからないわけではない……ような気もするけれど、やっぱりわかりたくないというのが本音のところだ。

そして太陽へ

溶岩に覆われた第1惑星から、その熱の源である星系の太陽へ向かう。

Sarum Primeの太陽
Sarum Primeの太陽

本来、人類学的には太陽の調査をする必要はない。

しかし、この星系の太陽には少々触れておくべきことがある。

かつて、アマー帝国がまだ宇宙に進出していない頃。人々が見上げる惑星アマーの夜空には、この星の輝きも含まれていたということらしい。赤色矮星ということでそれほどの明るさを持つわけでもないこの星は、約3000年ほど前に約1年にわたりその輝きを増したという記録がアマーに残っている。その期間が、Sarum家に幸運が続いた時期と一致していたために、Sarum家にとって吉兆を示す大切な星だとその頃から考えられていた。

だからこそSarum家は帝国の宇宙進出後、この星系の探査、植民地化を切望し、自分たちの首都星系として確立させたのである。

その3,000年ほど前の幸運とは一体何なのだろうか? せっかくその幸運の星を目の当たりにしているのだ。私はその場で年表を開く。今はYC124年、西暦でいうと23,360年にあたる。ということは3,000年前は20,300年あたりということだ。

すると、時期的にはちょうど、長きにわたってアマー島にこもって繁栄していたアマー帝国に、Udorian人が上陸したのが20,022年。そして、彼らがもたらすものに危機感を覚え、Reclaimingという名の侵略を開始し、クーニッド族を配下に置きつつ、全Udorian諸国を隷属させたのが20,371年のことだ。実に350年をかけた最初のReclaimingだったが、これが時期的には一致する。

元々、好戦的であり、Reclaiming肯定派だと言われるSarum家にこの時期、大きな出来事があったと考えてもおかしくはない。この場で結論が出ることではないが、この仮説は今後の調査の中で役立つこともあるだろう。

というより、むしろその頃から今と変わらないアマー帝国が、そしてSarum家があったということこそ人類学的には重要ことなのかもしれない。アマー帝国の建国は西暦16,470年。先のUdorian人の上陸までの3,500年あまり、単一の帝国として外に打って出ることもなく、独自の文化と信仰を深め、そしていざ打って出れば今度は現在までの3,000年間、とどまることを知らずに拡大し続けてきた大帝国。それがアマー帝国である。

私個人としては研究者としてあくまでも中立ではあるものの、ガレンテ人としては明らかに敵対国家であるアマー帝国。現在はアマー以外の各帝国も力をつけ、明らかに劣る存在ではなくなっているものの、それでも何か底知れないものを秘めた国と対峙しているということは忘れてはならないような気がする。

充実した調査だったが、最後に薄ら寒いものを感じながら、私は今日の活動を終え、アマー・プライムのステーションへと戻っていくのだった。


調査後記

こういう国を調べるときこそ、客観性が大切だ。そうでないと私の頭の中まで染まってしまいかねない。ガレンテの人たちは言うだろう。「あんなとんでもない国に共感などするものか!」と。

でも、忘れてはいけないのは、何千年にもわたってそんな国のそんな宗教に、国民たちは疑いも持たずに従い続けてきたということだ。もちろん奴隷たちは別だろうけど。

そこには、単に押さえつける力だけではなく、きっと魅力もあるに違いない。だからこそ、調査において冷静な目を忘れてしまうと、下手すれば洗脳されかねない。

いけないいけない。

寝る前につまらないことでも考えてリフレッシュしないとね。

うーん……あ、そうだ。

気になってたつまらない話。

あの太陽、輝きを増したのが3,000年ほど前だけど、どうも原因はわかってないらしくて、だから次に起こるのがいつかも、起こるのかすらもわかってないらしい。で、問題は、3,000年前のその時、この星系をかなり大がかりな絶滅が襲ったという証拠があるらしいっていうこと。

まあ、太陽がいきなり今まで以上の光と熱を発しはじめたらそうなるのも当然なわけで。

もし、今、その活動が起こったら……Sarum家にとって幸運どころの話じゃなくなると思うんだけど、その辺、どう考えているのかしら?

Sarum家の面々にインタビューでもできないものかな……?

でもたぶん……アマー宗教に入信とかしないと……ダメ……だろうな……。ヘタ……したら……奴隷……に……。

つまらないことを考えてリフレッシュできたのだろう。私は眠りに落ちた。

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*