MMORPG EVE Onlineの情報。初心者向け情報、プレイ日記やニュース、そして国家・人物・歴史・社会・文化・経済・物語などのバックストーリー翻訳。
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Ante – アンティ

Written in YC112-04-19

Ante

彼女が降下船のタラップを降りたところで突然立ち止まった時、Silphy en Diabelの従者達は不意に足を止め、何かあったのかと振り返った。彼女が微動だにせずに地面を見つめているしばらくの間、彼らは灼熱のインタキの太陽に照らされる滑走路でじっと待っていた。

「ミス en Diabel?」人々の中で唯一勲章を身につけた宇宙警察の官吏が前に出て、彼女の腕に手を伸ばした。

彼女は彼に対して素っ気なく手を振り、ゆっくりとひざまずいた。長く編まれた人工のブロンドの髪を肩の後ろにやり、コンクリート製の滑走路の上に手を走らせた。そして戻した手のひらにうっすらと埃や細かな石粒がついているのを頭を傾けて確かめた。彼女は微笑み、そして立ち上がると両手をこすり合わせ、あらためて少し離れた大聖堂の宇宙港ターミナルへ向かおうと側近達に頷いて合図した。ガラス製のパネルが陽光を反射してまぶしかったが、それでもメインエントランスあたりに先に到着して待っているいくつかの人影が見えた。

彼女が一行をターミナルに導くと、最後の2人の武装した護衛が船の近くに陣取り、その片方がもうひとりに近づいて「あれは何だったんだ?」とささやいた。

するとそのもうひとりは職務に忠実に目を離すことなく、ささやき返した。「久しぶりなのさ」


ざわめく礼拝者たちの中をできるだけそっと通り抜け、使いの者はフードを被った女性に後ろから近づき、視線はそらしたままさりげなく咳払いをした。彼女が彼の方を見ようと何気なく振り向くと、彼は息が詰まりそうだったが、どもりながらもなんとか口を開いた。「インターナル・セキュリティからあなたへのメッセージがございます、レヴァレンドマザー(訳注:本来、女子修道院長という意味で使われます。宗教団体でもあるSoEのトップなのでこう呼ぶのでしょう)」

「続けて」と彼女は息をついて、部屋の中の人たちの注意をひかないように、控えめに話した。広々とした寺院は、その規模と壮麗さと同じく、建築の迅速さにおいても印象的であった。彼女の正式な肩書きは最高経営責任者(CEO)であったが、彼女の組織が支援した多くの地で、怖れに満ちた迷信深い地元の人々から「レヴァレントマザー」と呼ばれていることを、彼女自身、密かに楽しんでいることを認めないわけにはいかなかった。

Sisters of EVEが人道支援の見返りに求めたのは、信仰に特化した大聖堂の建設許可だけであった。彼らは長年の間に、そのような構造物をわずか数時間で完成させる科学技術を会得していた。彼らが建築したものは高さ30メートル以上の天井を持ち、日々の礼拝に2万人の参拝者を収容することができたが、そのうちのひとつの建築がたった今終わったところだった。

「船が到着しました」彼は話し始めたが、言葉を続ける前に、他人の耳に入らないようあちこちに視線をやって確かめた。「シンジケートの船です」

その女性は被っていたフードを肩の上に下ろし、きらびやかな象牙の髪留めでしっかりまとめられた濃い茶色の髪を露わにした。彼女はローブの袖に手を入れてから、メッセンジャーを叱った。「これは現地当局で対処できる問題だと思います。我が子よ。シンジケートは自分の立場をわきまえているのです。だからもし彼らが……」

彼女の話を遮ったけれどすぐに後悔した。少年は叱られるのを覚悟で目をつぶり、とりあえず弁解した。「彼らではありません、レヴァレンドマザー。彼女です」

「彼女?」彼女は何か他のことを言いたげに息を吸ったが、不意にその動きを止め、部屋の中を見回した。彼女は考えをまとめ、言葉を発したが、少し声が大きすぎたので何人かの注意を引いてしまった。「Silphyがここにいるの?」

「はい、レヴァレンドマザー。彼女は牧師館であなたを待っています」彼は長居しすぎたことにすぐに気付き、頭を下げて敬意を表すと信者達の間を走り去っていった。

Santimona Sarpatiは、何人かが未練がましく見つめる中、フードを被り直すと、音もなくアーチ型の回廊に向かった。


Santimonaが会議室に入った時、Silphyはドアに背を向けて立っていた。会議室は奇妙な八角形の部屋で、なめらかな金属製の壁が天井付近で内側にカーブを描き、幾何学模様のエッチングが施されている。ドアの真向かいには、広々とした二重窓があり、そこからはインタキVの首都であるLenoikaを望むことができた。街の平屋根の建物たちは、真っ赤な午後の太陽の中でうだっているかのよう。彼女はレヴァレンドマザーが到着しても全く動くことはなかった。

「今日か明日には雨が降ると聞いていたけれど」彼女は窓に向かって言った。

Santimonaは儀礼的なローブを閉じていた絹のロープを緩め、椅子が2つしかない、部屋の一番中央にある四角いローテーブルの席に移動した。上品な服がしわひとつなく、組んだ脚をきちんと覆っていることを確かめると、彼女は答えた。「この惑星の天気予報は、この星系の太陽が晩期に入っていることもあってかなり不正確なことがわかっています」さらにうわべだけの笑みを浮かべてこう言った。「数日も滞在すれば、雨が降るでしょう。保障しますわ。でも、街で宿泊施設を探していただかなくてはなりません。敷地内の居住スペースはシスター達しか使えないのです。おわかりですね?」

Silphyは餌には食いつかず、ただ窓の外をじっと見つめていた。「ミスSarpati、こんなに急だったのに会って下さって感謝しますわ」

「実際のところ、なぜあなたが私と話したいのかがよくわからないのです」彼女は青白い腕をテーブルの上に乗せて、指で机を叩いた。「あなたのステーションはまた食糧不足なのですか?」

Silphyはようやく彼女の目を見たが、Santimonaが自分たちの波乱万丈な歴史のことで繰り返し放ってきたジャブに対してはまだ応えず、その代わりに相手の笑顔をまねして調子を合わせた。「いいえ、でもシンジケートはその件について、シスターズの援助に変わらず感謝しておりますわ」

Santimonaは感謝するように頷いたが、それは表面的なものに過ぎなかった。彼女は静かに心の中で数え続けた。28、27、26……。

「ここインタキ第5惑星でのあなたの取り組みはどうなっているの?」Silphyは3歩でテーブルのそばに寄ったものの、座らずにもたれかかり、影がもう一人の女性にすっぽりとかぶさった。「もっと長くここにいるの?」

「あなたも覚えていると思いますが」Santimonaは答えた。「大聖堂はどんなプロジェクトにおいてもその最後を飾る仕事なのです」彼女はゲストに座るように合図したが、Silphyはそうはせずに背筋を伸ばして立った。「申し訳ないのですけれど」Santimonaは改めて言った。「最近、あなたの肩書きが何なのかよくわからないの。どう呼べばよろしいかしら?」

「シンジケートの肩書きは純粋に内部的なものなので、気にしなくて結構ですわ。でも、私は再び姓を名乗るようになりました」Silphyはしばらく間を置いて、Santimonaを詮索するように見つめていた。「en Diabelは、インタキ語の方言でおおよそ何と訳すかご存じかしら?」Silphyは、まるでベテランの政治家が聴衆の周りを歩くかのように慣れた様子で、会議室のテーブルの周りを歩き回りながら話した。

Santimonaは、自分がその大げさな質問に答えることを期待されていないことはわかっていたので、ただ眉をひそめ、Silphyが考え続けるのを待っていた。


「いいね」と彼女はニヤリと笑った。「あとどれくらい?」

2、1 「今よ」 Santimonaはテーブルの上に身を乗り出し、Silphyも急いで反対側の席に座り、お互いに近づいた。次に口を開いた時には、シスターは緊迫した、押し殺したような口調だった。「この施設は真っさらだから、記録を中断するタイミングを計るのは少しやっかいだったわ。センサーが再稼働して記録が再開された時には、今から再開されるまでの間のすべての出来事はほんの一瞬の不具合に見えるはずよ。オペレーターはたぶん太陽の黒点活動のせいにするでしょうね。きっと時間は数分しかないわ」

「順調にいっているならそれでいいわ。もしあの気難しい年寄りの傭兵が私と直接話すことを拒否するなら、私たちを締め出すより、私たちを加えた方がよっぽどイージーなんだってあなたが説得してちょうだい」Silphyは手をテーブルに叩きつけて、言葉を締めくくった。彼女の瞳は部屋に差し込む深紅の光の中でゆらめいていた。

「それで、もし彼が拒否したら?」Santimonaの声には怒りの色は全くなかった。

Silphyは首をかしげ、顎をきつく掴みながら答えた。「あの裏切り野郎に、シンジケートは他の政府が我々を無視するのを黙って見ているつもりはないと言ってちょうだい。そして、あの訳知り顔の傭兵達が私たちのビジネスの邪魔になるだろうってアイツらが思っているなら、それは大きな間違いだとね」彼女は前屈みになって気を落ち着けてから、穏やかにこう続けた。「私が言いたいのは、もし私たちがこの取引に参加するならば、両方の組織にとって得るものがあるという事よ」束の間の激情の中、背中に垂れ下がる編まれた髪の一房が抜け落ちた。

テーブルの向こうに手を伸ばしたSantimonaは、その髪をシルフィの耳の後ろにそっと押しやり、微笑んだ。「そう、そのほうがいいわ。愛嬌があるのが一番よ? あなた」

Silphyは彼女に伸ばしかけた手をふと止めた。「Mona、彼は何て言うと思う?」
「時と場合による……」と彼女は言いつつ、彼女の注意が一瞬他に向けられたように見えたが、すぐに改めて言い直した。「……あなたが彼に何を提供するかによるわね。あなたには二つのやり方があることを覚えていて。私の経験から言うと、Muryiaはとてもやっかいな相手になると思うわ」

Silphyは椅子にもたれかかり、腕を組み、時間をかけて次の言葉を慎重に選んだ。「連邦は何十年もこの星系の取引をコントロールしていないし、もし彼があいつらからの血まみれのお金を自分の口座に入金し続けることを望むのなら、地元文化の尊重っていうものを学ぶことになるって彼に伝えて」

「ああ、それは難しいわ。彼はあなたがやらかしたゼファーシャトルの件を全く良く思っていないの。あなたがあれをやった時、シャトルの生産者は皆大打撃を受けたのよ。貴方が適切な商品を提供するなら、彼はきっとそれに報いることだろうと思うわ」

Silphyは、笑いをこらえるのに必死だったが、それでも目をそらそうとはしなかった。ようやく笑いを抑えた彼女は、こう説明した。「私は、まさに彼の会社がありがたがるだろう物を持っていると思うの。ところで、あのシャトルの件には面白い裏話があるんだけど……時間がなさそうね」

「その通りよ」とSantimonaはぶっきらぼうに答えると、立ち上がってローブをしっかりと身にまとった。12、11、10……

Silphyは席を立った彼女の姿勢を真似て、再びテーブルの上に身を乗り出し、魅惑的な笑みを相手に向けた。数秒の沈黙の後、彼女は尋ねた。「懐かしく思うことはある?」

「毎日よ」Santimonaは懐かしむようなため息をつきながら答えた。3、2、1…


Santimonaは突然振り返り、肩に力を入れると、手のひらでSilphyの顔を殴りつけた。その鋭い音は室内に響き渡り、Silphyは髪を振り乱し、椅子を越えて床に倒れ込んだ。

Santimonaは、テーブルの周りで声を限りに怒鳴りつつ、倒れている相手を非難するように指さした。「あなたの傲慢さには限度がないの?」Silphyが起き上がり、口元から流れる血を拭くと、シスターはさらに続けた。「私はあなたの犯罪的な計画に乗って、この名誉ある組織を危険にさらしたりはしないわ!」

「あなたは哀れね」Silphyの口からようやく言葉が漏れた。彼女は立ち上がり、防御の姿勢を取った。ドアの向こうでは、彼女の護衛がそこに配置されているシスターズオブイブの警備員たちと口論するのが聞こえた。「あなたが考えていることなんてわかってるわ、シスター。あなたがここにいる本当の理由がインタキ人にはわからないと思っているなら、あなたは狂ってる。これは、あなたたちが時代遅れのカルトの姿のままで乗り切る最後のチャンスだったのよ」

ドアが押し開けられ、大勢の武装した男たちがそれぞれの女性を取り囲むと、Santimonaは護衛を無視して捨て台詞を放った。「あなたは決して変わらないとわかっておくべきだったわ、Silphy。この星から出て行きなさい」

Silphyは憎々しげにレヴァレンドマザーをにらみつけると、頭を振って部屋から出て行き、彼女の護衛達も慌てて彼女についていった。彼女らは足を止めることなく大聖堂を抜け、降下船のタラップにたどり着いた。降下船は発着場に長い影を落とし、金属の船体は容赦なく照りつける太陽に焼かれていた。Silphyは豪華な建物を振り返った。彼女は、急勾配の建物から、てっぺんあたりにシスターズオブイブの聖なる紋章があしらわれた尖塔へとその視線を動かした。「サディスティックな魔女」彼女はつばを吐き捨てた。

そう離れていない、大聖堂のセキュリティ・チーフのオフィスで、SantimonaはホログラムディスプレイでSilphyのことを熱心に見ていた。警護の者達はまだ近くにいて、チーフは目上の女性が彼の場所を使えるように恭しく場所を空けていた。彼女はSilphyの一挙手一投足を観察し、このシンジケートの非公式なリーダーが船に乗る前に軽蔑するように地面につばを吐くのを見て眉をしかめた。「私はよく、どちらがより困惑すべき事実なのかわからなくなるわ。それは彼女がシスターの関係を捨て去ったという事実。そして、そもそも彼女が加わることを許されたという事実ね」


宇宙船に乗り、自室でくつろいでいたSilphyは、氷水が入ったグラスから一口含み、グラスをほおにあてると、反射的に顔をしかめた。彼女はくすりと笑うと椅子の肘掛けに埋め込まれたコンソールにパスワードを入力した。すると、すぐに半透明のヘッドアップディスプレイが彼女の目の前、半メートルほどの空中に現れた。いくつかの待機メッセージをスクロールしながら、最近のメッセージの中からひとつを選び、素早く目を通した。

Silphyは、メッセージの送信者にダイレクトにつなぐコントロールをタップした。彼女は自分の画面が消えるのをじっと待っていたが、やがてその代わりに手の込んだ入れ墨で覆われた老人の頭部3D映像が現れた。「Silphy」と彼は恭しく語りかけた。

「ミスター・Lecante」と彼女はゆっくりとうなずきながら答えた。「他の家族のコンセンサスは取れたかしら?」

「はい」彼は部屋の中に他の人がいるかのように辺りを見回したが、ホログラム・ディスプレイには何も映らなかった。「彼らはあなたの計画に賛同しました。で、次の行動は?」

「ゼファープログラムから受け取ったすべてのデータをまとめてちょうだい。カプセラ達が知らないうちにワームホール空間について私たちに伝えてくれたものすべてよ。それからデータコアを運ぶ手配をすぐにして。近々シスターズオブイブの代理人が受け取りにやってくるわ」

Lecanteは頷いた。「あなたは本当に完璧にやってのけました、Silphy。これこそまさにイシュコネが拒むことなどできないものでしょう」

「わかってるわ」彼女は会話を終えると、接続解除ボタンに触れ、もう一度グラスを頬に当てた。彼女はシンジケートへ帰る旅の残りを、キャビンの窓から外を眺めて過ごしたが、懐かしむような微笑みを隠すことはできなかった。


参考文献


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EVE Universe – Chronicles – Ante
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