宇宙庶民ふりっぷは、張り切っていた。
理由はふたつ。まずひとつは、自身のカプセラ生活が無事に一周年を迎えたこと。カプセラになったのはホントは数年前だけど、新兵教練(10連ミッションなど)を受けただけですぐに脱走してしまった過去は黒歴史。なかったことになっている。
(一方的に襲われる以外)カプセラとの戦闘もせず、探検とかなおみん博士との生産業に精を出し、なんとか飽きずに続けてこられたことに、ふりっぷは感慨を覚えるのだった。
そしてもうひとつは、ガレンテ連邦の日イベントだ。
ろくに戦いもしない代わりに、こういったイベントには熱心で、昨年はアマー建国記念日、カルダリ連合 労働者ユニオンデイのパレードの見学に参加したものだが、自身の所属であるガレンテ連邦の日、ミンマター解放記念日のイベントには参加できていなかったのである。(新人教練の真っ最中でイベントどころではなかった模様)
だからこそ、今年のガレンテ連邦の日を、ふりっぷは待ちわびていたのだ。目玉はふたつ。パレードと連邦グランプリだ。今までの記念の日イベントでは、だいたいパレードに参加するのみだったが、なんと言ってもガレンテ連邦の日だ。グランプリにも参加する気満々のふりっぷはNEW EDENを巡る機体を選び始めたのだった。
「連邦グランプリ」となっていますが、実際は二部構成で、第一部はスピードなど関係なし。設定された三種類のルートを自分のペースで踏破するものとなっています。これを完走すると、第二部のタイムトライアルに進むことができるという仕組みです。タイムトライアルで入賞すると、記念碑に名前が刻まれるという栄誉を得ることができます。
正直なところ、第二部のタイムトライアルにはあまり興味がないふりっぷだった。競技と名のつくもので勝利の目がないということをわかっているのもあるけれど、とにかく観光がしたい。そんなふりっぷなのであった。
とは言え、過去の記録を見るに、グランプリのルートはなかなか壮大なものになりそう。危険度はそれほど高くはなさそうだけど、とにかく長そうなので、足の速い船、そしてFitを考える。そんなふりっぷの脳裏にまず浮かんできたのは、シャトル。「とにかく素早く移動=シャトル」という程度の認識しかないあたり、この一年の経験値の低さがわかろうというものだ。でもスペック表を見るとひとつ気になることがあった。
ワープ速度である。一秒あたり5AU。その辺のフリゲートと同じレベルで、しかもFitで強化できないことを考えると少々心許なく思える。加速については艦の質量と慣性修正乗数を掛け合わせたものがモノを言うと聞いているが……。乗数は1と素晴らしいが、意外と重く、1,600トン。通常のフリゲートがおおよそ1,000トンあたりだと考えると、アドバンテージは思ったより少ないのかもしれない。
まあ、細かいことはわからないふりっぷだけれど、せっかくの機会だから色々考えている内に、使い道を考えもせずDodixieに置きっぱなしになっていたインターセプター、Ares(エリーズ)のことを思い出した。インターセプター(要撃機)ってなんだか足が速そうだし、ガレンテ船だからちょうどよさそうだとか適当なことを考えつつスペックを確認。素のワープスピードが一秒あたり8AU。これだ! とばかりにふりっぷはDodixieへ向かい、Fitを揃えることに。
とにかくワープスピードと、機動(加速)性にこだわった。あとはInterdiction Nullifier(インターディクション無効化)の再起動遅延時間への大きなボーナスがあるため、ヌルセク対策にこれも積んでおこう。そしてもちろん忘れてはならないのは、Festival Launcherと「花火」だ。今回配布されているのは「Four Freedoms Firework」すなわち「四大自由の花火」である。さあ、ガレンテ連邦の日、スタートだ。
この大人気のガレンテ花火には、「思想」「表現」「結社」「移動」、いわゆる連邦における生き方の真髄であると考えられている「四大自由権」を祝う意味がある。連邦憲法の四大自由が宇宙空間を横切って流れ出る様子を花火で表現したもので、ガレンテの休日にはよく見られる光景である。
Four Freedoms Fireworkの解説
こうして完成したAresのFitはこちらです。大したものではありませんが、長距離旅行用Fitということで、初心者の方向けに一応残しておきます……。今回、この機体で実際に完走してみて、かなり使いやすかったので。
[Ares, Aresse]
Inertial Stabilizers II
Inertial Stabilizers II
Inertial Stabilizers II
Damage Control II
5MN Y-T8 Compact Microwarpdrive
EM Shield Amplifier II
Medium F-S9 Regolith Compact Shield Extender
Compact Interdiction Nullifier
Festival Launcher
75mm Prototype Gauss Gun
Small Hyperspatial Velocity Optimizer II
Small Hyperspatial Velocity Optimizer II
ワープ速度が1秒あたり15.52AUと、なかなかの爆速です。加速性能の方も慣性修正乗数を(スキル込みで)1.336まで下げられたことで、質量と掛け合わせた数値がガレンテシャトルより大きく下回ることになるため、おそらく負けていないと思われます。(数値が少ない方がエラい)
実際、今回のグランプリは10~30ジャンプといった移動が頻繁にあり、星系内のワープ距離も50~100AU以上の距離のもの多々ありましたが、このAresなら、あっという間のワープインから超高速のワープスピードで、数え切れないジャンプとワープが続くこのグランプリもそれほどストレスを感じずに乗り切ることができました。また、経由地点に(強くはありませんが)敵NPCが配置されていることも多かったため、敵をMWDで振り切ったり、通常航行でオービットしながら、ランドマークを観察することも余裕でした(シャトルほど紙装甲ではないし、適度な距離を取ってオービットしているとほとんど被弾しない)ので、とても快適な旅になりました……っていうか、ランドマークを巡る旅になぜ敵を配置するのか……。
そんなわけで、ついにグランプリ仕様Aresと共にDodixieを飛び立ったふりっぷは、グランプリスタートラインがあるLuminaire星系へと向かい、まずは同星系で行われていたパレードに四大自由の花火を発射! これで勢いがついたふりっぷはその足でグランプリスタートラインへ向かったのだ。
グランプリスタートラインには他のカプセラたちも次々と現れては飛び立って行く。
そのさまをしばし眺めていたふりっぷも、ついに飛び立ったのだった。
ここからは、すべて写真なども撮影しながらの道のりでしたが、あまりにも一気に回りすぎで情緒も何もあったものではないので、今回はあえて大幅に割愛いたします。数ある名所や史跡を見てほしいというCCPの意図もわからなくはありませんが、一気に回るグランプリ形式のイベントにしてしまうとちょっともったいない気がしなくもありませんね。
まずは、Quafe社がスポンサーとなっている北東ルート。主にガレンテ – カルダリ – ミンマター宙域の名所を巡る旅だ。まずはVillore星系のパレードへ向かい、ここでも景気づけの花火を打ち込むふりっぷ。
そして経由地点などを通過し、カルダリ宙域へ。Urlenの「ウルレンⅡプロヴィスト暴動記念碑」やNew Caldariの「ランドフォール・クトゥオト・ミル・オービタルセンター」などを回る。このオービタルセンターは、カルダリ式の心身鍛練法を学ぶことができる場所ということで、ふりっぷも興味津々だったけれど、カルダリ最大の神殿であり、数多くのカルダリ人の英霊がまつられているランドフォール神殿と密接なつながりがある施設なので、恐らくガレンテ人であるふりっぷには叶わない夢だろう。
そしてNew Caldariから4ジャンプ先のSaisioにそれはあった。
NEW EDEN中に名を轟かした探検家、カティア・サエの偉業を讃える記念碑だ。
2019年3月9日、カティア・サエは、EVE Onlineで到達可能なシステムを1つ残らず探索するという偉大な目標を達成した初めての人物となりました。彼女はニューエデン内の5,201個に謎の宙域アノイキスの2,604個を加えた合計7,805個のシステムを訪れ、記録を残し、しかもその道中、戦闘でただの一隻も艦船を失うことがありませんでした。 この一大プロジェクトにより、当時から遡ることほぼ10年前の2009年12月に旅を始め、星々を巡る冒険を成功させた最初のカプセラとしてのカティア・サエの名声は確固たるものとなりました。
EVEニュース 「星々の間を駆け巡る」より抜粋
いつもろくに戦いもせずに適当に生きているふりっぷだが、その胸の奥には、戦いがなくともこの世界をしっかりと満喫する、探検家としての自負が多少はあるようで、明らかに他の場所よりも長い時間この空間に佇み、この偉大な先輩探検家の記念碑に見入っていた。
さて、そのあともグランプリのコースは延々と続く。いくつかのランドマークを巡り、ミンマター宙域へ。SOEプロジェクト・ディスカバリー記念碑や、Patorの「部族議会オービタルキャラバンサライ」などを巡る。部族議会はミンマターを構成する7部族が集まって議会を催す場とあって、なかなか壮観。
そして、さらにいくつかのランドマークを巡ったところで「アライアンストーナメント記念碑」にやってきたふりっぷ。優勝年ごとにそのアライアンスの名とロゴが刻まれている。自身アライアンス(コープ)に所属しながらも、ほぼ幻の存在になりつつある我が身を顧みつつ、この世界におけるカプセラ・コーポレーションやアライアンスの存在の大きさを改めて感じるふりっぷだった。
さらにルートは続き、Yulaiを経由し、ついにDodixieへ。そこでもまたもやパレードを観覧。ガレンテを代表する商都のパレードだからだろうか、惑星とステーションをバックに行進するパレードは心なしかより威厳あるもののように感じたふりっぷだった。
そしてついにLuminaireのグランプリフィニッシュラインへ。ふりっぷは意気揚々とゴールを通過したのだった……が、それは次の南東ルート ―― ガレンテ – アマー宙域を巡るルートの始まりに過ぎないのである。
という訳で、二週目はさらにダイジェストでお届けしよう。
この観測所を運営するのは、デュボレラボラトリーズ。このコースのスポンサーだ。
リアルも含めたカプセラたちの墓地である。無限の命を持つはずのカプセラにも終わりが訪れることをふりっぷは改めて思い知る。NEW EDENには様々な宗教が存在するが、きっと死者を悼む想いには違いはないのだろう。このモニュメントの周りに浮かぶ無数の墓(コンテナ)に、送られた人へこめた送る人たちの想いが凝縮しているのを肌で感じ、ふりっぷはまだ見ぬ、そして永遠に会うことのないであろうカプセラたちに、ただ祈りを捧げた。
さて、ここから先はアマー帝国の記念碑やランドマークをいくつか回ったが、その中に何気なくひとつのカプセラ記念碑を発見したふりっぷ。
ふりっぷははじめ、この前後もアマー皇族の記念碑だったこともあり、てっきりアマーの著名人かと思っていた。しかし、ざっと調べてみると、どうやらこの人物も先ほどのカティア・サエと同じくカプセラであり、この世界のコミュニティを支えた大物で、ベルドスパーの愛好家……らしい。
ふりっぷは考える。カティア・サエのような目に見える唯一無二の功績を挙げた人の記念碑が作られるというのは、ある意味分かりやすい話だ。しかし、数え切れない数のカプセラたちがせめぎ合うこの世界で、そのコミュニティを支えてきたという、決して明確ではない功績をもって記念碑が作られるというのは、どういうことなのだろうか? 幅広い活躍? ツールを作った? とても有名? どれをとっても、この人だけという感じはしない。でも実際に記念碑はここにある。ふりっぷは考えるのをやめた。きっと今の彼では想像もつかないレベルの話なのだろうから。
でも、考えるのをやめた代わりに妄想した。
いつか、記念碑は無理でもフィギュア化くらいはされたいものだね。ふりっぷは密かに、無茶な夢を抱いたのだった。
さて、コースを進め、聖テトリモン要塞修道会などを通過して、やって来たのはEVEトラベルエージェンシー。探検家や旅行者向けのツアーや情報提供を行う、小規模な独立系企業の本拠地らしい。
さすが小規模企業だけあって、ランドマークとしてはパッとしない。こういう企業がもっと頑張ってくれれば、探検や旅行に楽しみを見いだすカプセラがもっと増えるんじゃないかとふりっぷは思うのだった。しかし、そんなふりっぷの印象とは裏腹に、ここはEVEゲートがあるNew Eden星系に近いこともあって、旅行者や巡礼者にとって重要な拠点になっているようだ。
そう、このグランプリコースはここからEVEゲートへ向かい、EVEゲートを含むいくつかのランドマークを巡ることとなっている。もちろんふりっぷもこのコースを辿ったけれども、やはり聖地である。グランプリのコースとして一瞬通過したというレベルでその場所を紹介するのはどうかと考え、このレポートでは紹介しないことにしたふりっぷだった。
ふりっぷの脳裏には、Saaren Arma(サーレン・アルマ)の顔が浮かんでいた。きっと、自分がここで紹介しなくても、彼女がいつか素晴らしい調査ファイルを公開してくれるはずだ。そう確信しているのだ。
それからも移動を続け、ふりっぷはついに第二コースも制覇した。そして報奨として、Aresの「Luminaire Zenith」を手に入れた。すぐさま近くのステーションに立ち寄り、Skinを交換し、最後のコースへ向かうべく、発進した。
派手さはないが、ガレンテの宇宙の色にとてもよくマッチする。すっかり気に入ったふりっぷは、最後の、そして三つ目のコースをスタートした。
このコースはFedGov(連邦政府)広報局によるものということで、やはりお役所仕事である。いくつかランドマーク的なものも通過するが、どちらかというと、歴史の説明書きを読ませるのがメインで、しかも情報が断片的という感じだった。また、ガレンテ自体の歴史に触れるようなものが多かったため、ふりっぷにとっては、サーレンがこの一年で公開した、各種文献や現地調査ファイルの方でだいたい見知っているものだったのだ。
そんなわけで、このコースはふりっぷにとっては新たなSkinをまとったAresのお披露目、さながらウイニングランのようになってしまったが、その分爽快なゴールとなったのだった。
さすがに疲れたふりっぷだったが、ここでもうひとつ報奨を手に入れた。
「Grand Prix Racing Jacket」だ。
早速試着して、完走記念の写真を撮る。
しかし、最後にひとつ、ふりっぷの頭を悩ますことが生まれてしまった。
このジャケット、女性用も一着もらえてしまった。さあ、この一着をどちらにあげようか? いや、どちらにあげれば穏便にいくだろうか?
ほら、上の写真のふりっぷの表情。
ちょっと悩んでいるようにも見えるでしょ?
おしまい