前回は、現地調査がなかったために第7調査班ニュースとしてガリスタス海賊団についての新規公開の告知をさせていただいたが、それから一週間。私の耳にサーペンティス関連のニュースが飛び込んできた。
ガーディアンズガーラなる恒例行事が開催されるとのこと。私は昨年の今頃はまだカプセラではなかったのであまり興味もなかったが、これはどうやら海賊勢力サーペンティスとエンジェルカルテルの協力関係を祝う行事のようだ。正直なところ、この両勢力の関係については「良好である」というくらいしか知らなかった私なので、これを機会ととらえ、今回は両勢力の内、サーペンティスに焦点を合わせ、調査を進めることにした。
もっとも、一大勢力であるので、まずは基本的な調査になる。皆さんも新規公開されたこれらの資料で、サーペンティスについての基本情報を押さえていただきたい。
NEW EDEN 国家・勢力総覧
- サーペンティス – Serpentis
- Serpentis Corporation(サーペンティスコーポレーション)
- Serpentis Inquest(サーペンティスインクエスト)
第7調査班クロニクル書庫
NEW EDEN 人類学大事典
まず、サーペンティスというと、その名前が「蛇」を連想させることもあり、典型的な海賊というイメージをお持ちの方も多いと思われるが、意外に企業的性格が強いことに驚かされる。もちろん企業といっても現在の実態は裏社会で違法ドラッグを手広く扱う集団であり、そういう所には各地の海賊や無法者が集まるもので、結局の所は海賊勢力と言って問題がないようである。
しかし、それでも最も力を入れているのは戦いによる勢力拡大ではなく、薬物を中心とした化学開発とその密売による利益獲得を中心としているようで、戦闘行為はむしろその目的のためにあるとも言われている。このあたりはやはり他の海賊勢力に比べると企業的性格が強いと言えるだろう。
このサーペンティスが生まれたのはわずか数十年前。それも個人による企業設立が起点となっているということだが、今や一大勢力である。これはサーペンティスコーポレーション創設者にして現CEOであるSalvador Sarpatiの手腕とカリスマ性あってのことだと推察される。彼は星団最西部のFountainリージョンに拠点を置き、そこからすべてを操っているとのこと。しかもその拠点がある星系は「Serpentis Prime(サーペンティス・プライム)」と名付けられ、まさに小帝国であることを思わせる。今回、私はこのサーペンティス・プライムの現状をこの目で確かめるべく、現地調査に赴こうと思う。
しかし、今私が滞在しているのが、Sinq LaisonリージョンのTrossereにあるUoCステーションだが、そこからサーペンティス・プライムまで、安全性優先だと50ジャンプ以上、最短距離でも36ジャンプ。しかもどちらにしてもヌルセク領域を20以上通過しないといけないとなると、カプセラとして未熟この上ない私には、どう考えても荷が重い。
そこで私は、友人のふりっぷの艦をチャーターすることにした。彼によると、戦闘能力は低いものの低セキュリティ宙域をくぐり抜けての探検に関してはそれなりの経験があると聞いている。一抹の不安は残るが、これも学問のためと割り切り、私は彼に連絡を取るのだった。
サーペンティス・プライムへ
そして、やがてふりっぷがTrossereに寄港した。以前聞いた話では危険宙域での探検に適したAsteroという高級艦に乗っているはずが、なぜかガレンテ製のリーズナブルなフリゲートであるImicusでやって来た。それもやたら新品くさい。私は理由を問い詰めるも、彼は口ごもるばかり。どうやらAsteroは……。
一気に不安が膨らむが、今回は私がお願いしている立場であるので、あまり追い詰めることはせず、報酬を取り決める。道中、ガーディアンズガーラで盛り上がるサイトを調査し、そこでの収穫をすべてふりっぷに委ねることで交渉は成立した。私は目的地へ、彼は好きに寄り道をすることで儲ける。私は実質的に出費無しということになるが、友人同士だから問題ない。
私たちはTrossereのUoCステーションを後にした。
馬鹿にしていたわけではないが、彼は星系を渡り歩きつつ、以外に手際よくいくつものガーディアンズガーラサイトを発見し、Imicusで接近し、戦利品を獲得してゆく。場所によってはまさに祝賀ムード一色で、花火も打ち上げられている。
しかし、やはり楽しいことばかりではない。やがてヌルセク領域に侵入すると、ふりっぷの表情もさらに引き締まってくる。そんな中、ワープドライブ中、急に引っ張られるような感覚と共に艦が急停止する。うろたえる私には構わず、ふりっぷはモニターをせわしなく操作しながら、艦の状況を確認する。どうやら現地勢力が仕掛けたバブルに捕まってしまったようだ。バブルのどの位置に嵌まっているのかをとっさに確認し、最短距離でバブルの外を目指す。敵機は幸い少なく、距離も至近距離というほどではない。いくらか被弾しながらもバブルを抜け出すと即座に進行方向あたりに存在した衛星へとワープを開始し、なんとか切り抜けることができたようだった。
戦闘になれている皆さまならどうということはないのかも知れないが、非戦闘員である私にはすべてが初めての体験だった。冷や汗がスーツの内側ににじむのを感じつつ、あらためてヌルセクの危険性を認識したのだった。
このあとふりっぷはダイレクトスキャンをフル活用しながら、ジャンプゲート間を飛び石を渡るような進路を取りつつ進み、ようやく目的地であるサーペンティス・プライムへのジャンプゲートを抜けたのだった。
サーペンティス・プライム現地調査
サーペンティス・プライムはヌルセクリージョンであるFoutainリージョンの奥地にあるため、どのルートを辿っても多くのヌルセクを通過する必要がある。さらに星系に入るルートもひとつだけであり、守るには最適の地理条件である。
上の図がFountainリージョン全図であるが、左側のグレーの部分がPhoenixコンステレーション、その中のオレンジの点線でマークされているのがサーペンティス・プライムである。いかに奥まったところにあるかがおわかりいただけるだろうか?
このサーペンティス・プライムは8つの衛星からなる星系である。先ほど述べたとおり、外部と往き来できるジャンプゲートは第5惑星の軌道上に展開されている。そしてサーペンティスコーポレーションの本拠地ステーションは最も外側である第8衛星軌道上に、関連企業であるサーペンティスインクエスト社の本社ステーションは第6惑星軌道上に展開されている。
まずはインクエスト社本社ステーションへ接近。
カルダリ系のステーションを利用している。この企業はニューロブースターや違法ドラッグ製造の中枢となっているサーペンティスコーポレーションとは違う、サーバーインプラントや新たなクローン技術の研究を主に行っていると言われている。所有ステーションはこのひとつだけということだが、サーペンティス・プライムにその本拠を構えるところからも、サーペンティスが新たな分野に効率的に乗り出すための戦略的企業であると見ることができるだろう。
サーバーインプラントもクローン技術も今の人類にとって不可欠なものではあるが、法の規制にとらわれないその性質は研究の発展にはプラスの面もあるだろうが、事が人間の潜在能力や存在そのものに関わってくる問題だけに、暴走しないように注視する必要がある。
そして、私たちはサーペンティスコーポレーションの本社ステーションへと向かう。
こちらもカルダリ系のステーションだが、さすがに巨大なステーションである。至ることころに存在するドッキングベイのあたりを中心に多くの艦船が行き交っているのも確認できる。元々ガレンテ起源の企業であるはずだが、CEOであるSalvador Sarpatiの父がガレンテの政策によって失意の中死亡したこともあり、現在はガレンテと敵対し、カルダリに比較的近いと言われている。それがこのステーションにも現れているのだろう。
確かにスタンディングを確認すると、ガレンテとのスタンディングは-9.0と、まあ最悪なのだが、カルダリや他の主要帝国とはあくまでも+-0のスタンディングとなっており、カルダリと近いとは言え、あくまでも「裏」でのつながりということだろう。
私たちは一旦着艦したものの、あまり落ち着かず、しばらくすると再び飛び立った。そしてこの星系にあるもう一つのステーションを確認してから帰路につくことにした。
それは、Archangelsの試験施設である。防衛の任に就いているガーディアンエンジェルズではなく、アークエンジェルズ、すなわちエンジェルカルテルの主力コーポレーションである。
ステーションとしては典型的なミンマタータイプのステーションで、特筆することはない。ただ、ここにアークエンジェルズの実験・試験ステーションが存在するこということ自体が特筆すべき事である。
まず、先に述べたように徹底的に守りを重視したこの星系に別勢力のステーションがあると言うことは、それだけ深い関係性があるということの裏付けだと言える。サーペンティスとエンジェルカルテルのスタンディングは8.0。完全に切っても切れない関係というレベルである。
そして、ここにあるのが20を越えるアークエンジェルズステーションのほとんどを占める工場系、軍事支援系のステーションではなく試験施設だと言うことだ。周知の通り、サーペンティスはエンジェルカルテルとの取引において、防衛の提供を受ける代わりに、自らの研究・開発の成果を無条件でエンジェルに提供することとなっている。恐らく各地のステーションで開発された成果がこのサーペンティス・プライムに集約され、それをエンジェルカルテルが受け取り、試すための第一施設となっているのではないだろうか?
そんなことを考える一方、やはり実感として感じるのは、海賊勢力の本拠星系にしてはとにかく整然とした、平穏な雰囲気である。研究者である私には平和であることに越したことはないが……。そう思いつつも長居は無用と、再び唯一のスターゲートから、玄関口とも言える星系YZ-LQLへと戻る。
往きはとにかくサーペンティス・プライムに無事に到着することだけに集中していたが、今改めて少し余裕を持ってこの星系図を眺めてみると、納得である。
サーペンティス・プライムへ向かうスターゲートがある第7惑星の軌道上にひとつ、さらにそのひとつ内側にある第6惑星の軌道上にもひとつ、それぞれガーディアンエンジェルズのステーションが監視の目を光らせている。この配置だと各スターゲートから向かう不審者を第6惑星の戦力が叩き、さらにサーペンティス・プライムへの唯一の入口を第7惑星の戦力がまさに門番として守ることができる、素人目にも鉄壁の防衛態勢である。これがサーペンティス・プライムの平穏さの理由なのだろう。
そして私たちは、今度こそ帰路へつくのだった。
調査後記
やはりNEW EDENでは海賊といえども、侮れない。今回の調査は新たなものを見つけるためというよりは、巷で言われているサーペンティスの性質を現地調査で裏付けるためといったところだが、それでも収穫は大きなものだった。
それにしても、CEOのSalvador Sarpatiの才覚は疑うべくもないが、私が気になったのはその父親であるIgil Sarpatiである。彼自身優れた科学者であり、ガレンテ連邦有数のニューラルブースターの開発企業を立ち上げ、運営していた傑物なのだが、それだけではなく、彼の養子のひとりがサーペンティスのCEOとなり、さらに他のひとりであるSantimona SarpatiはSisters of EVEのCEOとなっている。
単に優れた親の二世として出世したということではなく、一時は没落した家系からこれほど傑出した存在を複数輩出するというのは希有なことだ。養子を選ぶ目が確かなのはもちろんのことだろうが、彼が亡くなるまでに見せた生き様がふたりにも影響を与えたのだろう。彼は一体子ども達に何を見せ、何を経験させてきたのだろうか? 人類学を専攻する者として、私はIgil Sarpatiの生涯に思いを馳せるのだった。
Trossereに送ってもらう前に、一旦探検の成果を降ろすためにJitaへ立ち寄った。そこで私はふりっぷに探検の成果を見せてもらった。インベントリモニタに表示されている参考価格は実に400Miskを越えている。それはみんなカプセラになりたがるわけだ。
呆れ半分、そしてほんの少しのうらやましさも含まれた視線でその宝の山を見ていた私に気付いたのか、ふりっぷはその成果の中からいくつかを私に手渡した。
……。
見事に安いものを選んでくれたものだけど、研究のためにカプセラになるような変わり者である私にとっては結構嬉しかったりする。どうもカプセラ達に由来する品物らしい。またいずれ調べてみよう。
あいかわらず戦いはしないし、運んでもらっただけだけど、それでも初めてヌルセク領域へ踏み込んでの現地調査。これからますます研究の幅が広がってゆくだろう未来に胸躍らせつつ、今回の調査報告を締めくくろうと思う。
University of Caille 人類学部第7調査班
首席研究員 Saaren Arma
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