MMORPG EVE Onlineの情報。初心者向け情報、プレイ日記やニュース、そして国家・人物・歴史・社会・文化・経済・物語などのバックストーリー翻訳。
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Old Man Star – オールドマン・スター

原典公開日 YC103-07-02

ガレンテ連邦内をPeccanouette CircleからPatrie周辺まで旅するなら、その途中、寒冷な無人の白色矮星系であるOuperiaを通過することで近道をすることができる。今ではOuperiaという名前を覚えている人は少なく、ほとんどの人は通称として使われている「Old Man Star(オールドマン・スター)」という呼び方しか知らないことが多い。

星間ジャンプドライブの技術はかなり新しいものである。この技術が登場するまで、帝国が領土を拡大するためには、船を各星系に送り出してスターゲートを建設するしかなかった。この建設船の中で最も早いものは、光速の約30%の速度を出すことができた。この速度なら、10光年先の星系に33年ほどで到達することができる。建設船の乗組員は旅の間、コールドスリープ状態に置かれ、目的地に近づくと蘇生するようになっていた。

その後、ジャンプドライブテクノロジーが利用可能になると、これらの船の一部はジャンプドライブを搭載するように改造された。このことは数十年にわたる旅が過去のものとなったことを意味していた。しかし、これら旧型艦はジャンプドライブに見られるようなテクノロジーを扱うようには造られておらず、致命的な故障の話が頻繁に聞かれるようになった。そんな話のひとつが、Darieux老の建設船の物語である。

公式より転載

YC11年、ガレンテ・カルダリ戦争も終わりが近づいていた頃、一隻のガレンテ建設船がOuperiaとして知られる閑散とした星系に向けて出発した。星系にある平均的なアステロイド帯からの金銭的な利益はほとんど見込めないものの、その星系にPeccanouette圏とPatrie周辺地域をつなぐスターゲートが設置されれば、長期的に見て交易面で有益なものとなると思われた。

建設船は12光年離れたVillore星系から出発した。予定所要時間はわずか数分だった。乗組員は5名と、数十名必要だった頃と比べると大きく減少した。これは戦争の過程で進歩したテクノロジーによって多くのドローンやロボットが実際の建設作業を受け持つようになっていて、クルーは大抵オペレーターや技術者として乗船していたからだ。

建設船が出航した直後、災難が降りかかった。ドライブの計算ミスがジャンプのミスを引き起こし、船は本来のコースから数光年外れた小惑星帯の真ん中にジャンプインしてしまったのだ。その数秒後大型の小惑星が船に直撃した。その衝撃で乗組員4人が死亡したが、最後の一人は生き残った。彼の名前はCeul Darieux。船のドローンオペレーターである。

いまだ戦争による混乱中であった連邦当局は、CONCORDが仲介するカルダリとの和平交渉を検討しており、内部で激しく議論されているところだった。彼らはOuperiaほどの短期的価値も見いだせない星系のためにさらに数百万iskの船を失うだけの理由を認めず、プロジェクトを棚上げすることを選択した。船の計算ミスは、船を送り出した局の職員には明らかであり、また、船の亜空間ビーコンと通信アレイが衝撃で損傷していたため、船は破壊されとものと見なされ、見限られることとなった。

Darieuxの当面の問題は、自分がどうやって食べていくかということだった。船内のスペースと重量を節約するために食料は搭載されていなかったが、改造前からあった温室バルブは食用の植物を育てるのにまだ使えそうだったが、それには光と熱を供給する太陽が近くにあることが不可欠であり、それがなければ、宇宙空間においてバルブも植物の種も何の役にも立たないのである。また、水不足についても酸素と同様に差し迫った問題だった。

しかし船の現状はこれらの問題を容易に解決させてはくれない。小惑星は船の側面に大きな傷をつけ、船の必要不可欠なシステムの多くを破壊してしまった。特に貨物室の被害は大きく、破壊された機器の破片や小惑星の破片が狭い空間に散乱していた。

Darieuxは自らの技師としての技術をつぎ込んで問題解決にあたった。彼はまず燃料タンクをいじり始めた。液体酸素と液体水素で満たされた燃料タンクは船が目的地に近づいた際、一旦速度を落とすための推進装置に必要なものだった。タンクの内容物は極度に引火しやすいもので、むやみにいじるのは非常に危険だが、Darieuxは忍耐強く注意を払って燃料から制御された化学反応を引き出し、水と酸素を得ることに成功した。そして、船内から集められるだけのあらゆるガラスや金属板を溶接して、遠くの星のわずかな光を集め、蓄えた。これは彼が温室バルブのひとつで食料生産を始めるのに充分なものだ。バルブは船内の浄化槽につながれ、植物のための肥料も確保した。その結果、一人分としては充分な食料を確保でき、後には酸素も十分に生産できるようになった。つまり、Darieuxは自分の小さな生態系を作ることに成功したのである。

Darieuxは一度船内の状態を安定させ、自分の身の回りのものを用意した。その次には船の進路を調整しなければならなかった。衝突によって船の進路はわずかに変化し、広大な宇宙空間で、船はOuperia星系から何十億キロも外れてしまった。推進システムは修復不可能なほど損傷していた。

――船は制御不能に陥り、永遠に深宇宙へと向かっていくばかりだ。

対策に時間をかければかけるほど、船はさらに遠くへ漂流してしまうため、迅速に解決しなければならない。Darieuxは新しい推進システムの構築に貴重な時間を費やす代わりに、もっと独創的な解決策を選んだ。船にはわずかではあるが、戦闘用のミサイルが搭載されていたのだ。Darieuxはミサイルを発射し、それを転回させ、船の装甲が最も厚い部分で爆発させたのだ。着弾位置を慎重に計算し、爆発の大きさをコントロールすることで、Darieuxは船を元のコースに正しく合わせることに成功した。一時は船を完全に反転させようとも考えたが、そのための十分なミサイルを持っていなかったし、たとえ持っていたとしても、船体がそのような強引な方法には耐えられないとすぐに気づいた。

船はまだ、現在の速度でOuperia星系から何十年という地点にいる。旅の最も退屈な部分の始まりである。Darieuxはその間、貨物室のスクラップを使って素敵なロボットを作ったり、設計したりしていた。船に衝突した小惑星には、超希少鉱物のmegacyteが非常に多く含まれていることがわかった。megacyteは高度なロボットやドローンの製造に非常に価値のある独自の性質を持っているのだ。

絶え間のない無重力の中での生活と仕事は、Darieuxにハイテク製品の組み立てに関する独特の洞察力をもたらした。限られた資源と道具しかなかったにもかかわらず、彼が長い年月をかけて生み出したものは、その独創性と輝きにおいて、その後も比肩するものはない。

小惑星の衝突とそれに続くミサイルの爆発による速度低下の影響もあり、予定より44年遅れて、ついに船はOuperia星系に進入した。Darieuxはこの日のために、何年もかけて船を減速させる技術をいくつか考案していた。主な方法は、星系内の恒星を利用して減速させることだった。推進システムが故障したままだが、Darieuxはいくつかの方向制御用のスラスターを、最後の一滴まで燃料を供給して、なんとか作動させた。そして、星系の惑星間をジグザグに移動し、惑星の重力を利用したり、一時的に大気圏に突入したりしながら船を減速させていった。このような変則的な方法を用いて、Darieuxは船が再び深宇宙に飛び出すのを阻止することに成功したのである。

この頃にはDarieuxはすでに年老いていた。長すぎた無重力生活のため、その痩せ細った体はひどい状態だった。しかし、彼の精神力はいまだ強く、目的地に到達することを諦めることはなかった。Ouperia星系にいることには満足していたが、彼の状況が悲惨なことには変わりない。救助の見込みがまったくないからだ。運命は自身の手に委ねられている。唯一の選択肢は自力でスターゲートを建設することだけだ。

スターゲートを建設するために必要な機器は、すべて破壊されたり、見分けがつかないほど改造されたりしていた。Darieuxは一から革新的なドローンやロボット工場を開発・製造するしかなかった。白い主星と茶色の小さな伴星との共鳴点の近くにある、大きな小惑星を活動の中心とした。その小惑星に、Darieuxは自宅を兼ねる小さな組立工場を建設し、ロボットの友人たちと一緒に5年間の歳月をかけて、たった一人でスターゲートを完成させた。全宇宙でも一握りの人しかできないであろう偉業を、Darieuxは80歳にして成し遂げたのだ。その髪は白く、顔はしわだらけで、手は震えていた。

つぎはぎだらけの建設船がゆっくりとスターゲートを通り抜けた時の、Villore星系のスターゲート管制官たちの驚きを想像してみてほしい。遠い過去にすでに失われていたと思われていた作戦艦の生き残りの凱旋だった。

Darieuxは、しばらくの間メディアの脚光を浴びていたが、その後、約半世紀に及ぶ信じられないような航海の中で作成された設計図をメインにおいたCreoDronという会社を立ち上げた。彼はその数年後に亡くなった。弱り切った体と欠陥だらけの内臓はクローニングを行うにはあまりにも傷つきすぎていたのだ。

しかし、彼の遺産は今日に至るまで強固に引き継がれている。CreoDron社はニューエデン最大のドローン製造会社であり、創業者のイノベーションは今でもドローン業界を牽引している。OuperiaシステムがOld Man Starと命名されたのは、世界中の賞賛あってこそと言えるだろう。


この文章は下記原典を翻訳したものです。原典の著作権はCCPに帰属します。
EVE Universe – Chronicles – Old Man Star
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