私はSaaren Arma。University of Caille人類学部第7調査班の首席研究員だ。
前回触れたとおり、このUoC人類学部とは、人類学というものをかなり広範なものと解釈して研究する部門として世に知られている。では、第7調査班についてはどうだろうか? おそらくほとんどの市民たちにはその活動は知られていないことだろう。
実のところ、私たちの主な調査対象は「書物・文献」であり、いわゆる新たな発見が期待されるものではない。学部内では「司書係」などと揶揄する者もいると聞く。もちろん学問にとって新たな発見というのは花形であると思う。しかしこの世界では情報というものがあまりにも断片的に扱われている。今の経済活動、軍事活動に直結する情報はある程度まとめられてはいるものの、そうではない、歴史、民族、風俗など本来なら我々の生活を彩るべき情報は存在こそするものの、未だ体系的にまとめられているとは言えない現状だろう。
だからこそこの第7調査班は、宇宙にちりばめられた様々な文献をまとめるために学部内で新設されたのだ。そしてそのような新設部門だからこそ、まだ若い私が首席研究員として抜擢されたということを、私は隠すつもりはないし、その立場を卑下することもない。どんなものにも始まりはあり、始まりを担うということは名誉に他ならないからだ。そしてパイオニアだからこそ自由で独創的な活動ができるのだと私は考えている。
現在、第7調査班の活動の柱は、先に述べたとおり、様々な文献を蒐集し、編纂し、そしてその結果を広く世に広めることだ。そのためには蒐集した文献を少数言語を操る民族向けに翻訳することも必要となる。このような情報こそ、あらゆる民族に分け隔てなく提供されなければならない。
そして私自身は、そうして集められた情報をより有機的に結合し、または血の通ったものにすべく、実際に各地を訪れ、その調査記録をまとめることにした。その調査記録こそ今あなたが読んでいるものに他ならない。これが意味のあるものになるのかはまだ確証はないが、そうなることを信じて調査を進めていこうと思う。
University of Caille 人類学部第7調査班
首席研究員 Saaren Arma