Written in YC102-01-31
Mind Clash(マインドクラッシュ)は既知の宇宙で非常に人気のあるスポーツである。アマー・プライムの王宮でも、カルダリの賭博場でも、熱狂的にプレイされている。クラッシュ・マスター(世界のベストプレイヤー)はスーパースターであり、ガレンテの都会の若者もミンマターの不良達も等しく畏敬の念を抱いて崇拝している。
このゲーム自体は、「Clash of Wits」という簡単なコンピューターゲームから発展したもので、2人の参加者が人形遣いに扮し、さまざまな生き物や力を使って、どちらかが降参するまで攻撃し合うというものであった。このゲームは、ティーンエイジャーや若い青年たちの間でかなり人気があったが、いかなる意味でも社会現象となったわけではなかった。
近年のニューラルテクノロジーやサイバーテクノロジーの大幅な進歩により、コンピューターで作られた人形師を操作するのではなく、むしろプレイヤー自身が人形師となる新たな段階への道が開かれたのである。幻想的な生物、怪物、現象は、依然としてコンピュータの中のビットやバイトに過ぎないが、精神と機械の結びつきが強いため、生身の人間である人形師にとっても同様に危険なこととなるのだ。たとえ、参加者は相手を文字通りの意味で切り刻むことはできなくても、脳への集中的な負荷によって引き起こされる潜在的な精神的外傷は、頑強な人間を一瞬にして危険な状態に陥れてしまうほどである。
実は、幻想的な生き物や現象は、それ自体が何かしているわけではなく、参加者の心の中で実際に起こっていることを視覚的に描写しているものに過ぎないのである。幻影(イリュージョン)の行動や状態は、実際の闘争の様子を観客に対して充分に伝えている。現代の競技場では、この幻影はホログラムとして参加者の頭上に投影されることが多い。
スター選手には皆、自分のトレードマーク的なイリュージョンのレパートリーがある。それは、派手な衣装やキャッチーなニックネームと相まって、ファンがスター達を容易に見分ける要素となっている。イリュージョンだけでなく、試合会場には巨大なスクリーンが設置され、観戦する多くの人々に映像や情報を伝えている。その内容は、汗だくの選手の顔のアップや、心身の状態を示す詳細なデータチャートが中心だ。
その新バージョンのゲームは「マインドクラッシュ」と呼ばれている。100年以上前にリリースされて以来、このゲームは本格的なスポーツに成長し、何十億人ものファンと何十億もの収益を生み出してきた。その結果、マインドクラッシュは、スターダム、取り巻き達、野心、ギャンブル性やそれに伴うショーマンシップなどあらゆる要素からなる、最大のエンターテイメントとなったのである。
多くの人にとって、ワールド・チャンピオンシップ(世界選手権)は1年のうちで最も重要なイベントだ。この大イベントでは、星団中から16人のベストプレーヤーが集まり、激突する。八百長や不正の噂がこのイベント(そしてこの競技全体)のイメージを多少悪くしているが、多かれ少なかれ誰にとっても大いに魅力的であることに変わりはなく、マインドクラッシュに賭けることは何十億人もの人々のお気に入りの娯楽の一つとなっている。
現在のマインドクラッシュのワールドチャンピオンは、インタキ系ガレンテ人のJoelyn Donalokosだ。クラッシュマスター歴7年のDonalokosは、過去2回のコンテストで世界チャンピオンになり、過去3年間はクラッシュマスターの収入ランキングで首位に立っている。彼が特異とするのはブルータイガー・イリュージョンで、これは全世界で最も広く認知されているシンボルの1つとなっている。
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EVE Universe – Chronicles – Mind Clash
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