QED 式の密室(高田崇史)

書籍情報

著者 : 高田崇史
発行元 : 講談社
新書版発行 : 2002.1 講談社ノベルス
文庫版発行 : 2005.3 講談社文庫

歴史マニアの桑原崇(くわばら たかし)とその後輩棚旗奈々(たなはた なな)の薬剤師コンビが歴史の謎にまつわる事件の謎に迫るシリーズ第五弾。

今回は安倍晴明、陰陽道に題材を採り、現代の陰陽師の末裔の家に起こった密室殺人とのつながりを解き明かす。

こんな人にお薦め

  • 安倍晴明、陰陽師に浪漫を感じるあなた
  • 手軽に読める一冊をお探しのあなた
  • QEDシリーズ初心者なあなた(にも意外と良いかも?)

あらすじ

以下文庫版裏表紙より引用

「陰陽師の末裔」弓削家の当主、清隆が密室で変死体となって発見された。

事件は自殺として処理されたが、三十年を経て、孫の弓削和哉は「目に見えない式神による殺人」説を主張する。

彼の相談を受けた桑原崇は事件を解決に導くと同時に「安倍晴明伝説」の真相と式神の意外な正体を解き明かす。

好調第5弾!

以上引用終わり

書評

面白い!……けどさすがに現代の事件が中途半端。

桑原崇と小松崎という対照的な二人が大学時代に出会ったきっかけとなった事件を回想する形で事件が語られるこの作品。テーマは安倍晴明、陰陽道ということですが、分量的にはこのシリーズとしては破格のライトさです。QEDシリーズにしては少々コンパクトな印象だった「ベイカー街の問題」よりもページ的にも約半分、しかも、文字が大きいw(文庫版)

なかなか旬のネタですし、いかにも高田先生ならじっくり深く語られそうな素材だと思ったのですが、意外です。

ひとつには、安倍晴明の経歴や行動の記録自体が曖昧だったり伝説的なものが多かったりいたしますので、推論によって謎を解き明かすことが多くなり、資料に基づいた緻密な検証を述べる必要性が低かったのが原因かも知れません。そして、もうひとつは現代に起こる事件が薄いのが原因かも知れません。

陰陽師の末裔の家で起こった密室殺人。非常に魅力的なテーマですが、多少人間関係なども絡めてはいるものの、ミステリ的にはワンアイデアです。普通なら長編作品としては肩透かしも良いところです。しかもそのトリック自体、一種のトンデモ系ですからなおさらです。

しかし、それでもなかなかどうして楽しめます。

なぜか?

そこはさすがのQEDシリーズですから、歴史解釈がお見事なのです。上で述べましたように、今回は素材が式神の使役をはじめとしていろんな伝説に飾られた安倍晴明、陰陽道ですから、それを直接的に歴史的資料の解釈によってその謎を解き明かしているというわけではありません。しかし、冒頭で奈々に語られる崇の「通りゃんせ」の解釈、菅原道真の怨霊の解釈が、中盤の安倍晴明の出自にも絡まって式神の解釈へとつながり、さらに鬼、妖怪、狐などの日本古来の伝説の解釈にまで行き着きます。そして、その解釈がそのまま事件の解決に結びついているあたりもお見事です。トンデモ系の事件解決が、その説得力のある歴史解釈によって頷けるものとなっています。(もっとも、あり得るとはなかなか思えませんがw)

そうなると、事件が薄いとも言えないんじゃないの? ということになりそうです……が、どうしても「これは肩透かしだよな~」といわざるを得ない部分があるのです。微妙にネタバレなので、下のネタバレコーナーで。

しかしそこを除けば、お手軽に読める作品ながら、目からうろこの歴史解釈、それが現代の事件解決につながる、というQEDシリーズの特色がきっちりつまっている良作と言えます。意外にQEDシリーズに手を出すのを躊躇している方が、まず読んでみるのに適した一冊かも知れませんね。人間関係などは当然第一作「百人一首の呪」を読んだ方がわかりやすいですが、あれは正直「凄いけど取っつきにくい」ところがありますしねぇ。

どちらにせよ、歴史ミステリ好きの方にならお薦めはできる一冊です。

以下、微妙にネタバレ! 未読の方はご注意を

上で述べた、「事件が肩透かし」についてですが……

事件の真相が語られたあと、まだ結構ページが残っているし、あっさりとしすぎた解決だったので、もうひとつ軽くひっくり返してくれるのかと思ったら、あとは延々歴史解釈のみで終わってしまいました。事件が解決してから40数ページ。歴史解釈に重点を置くシリーズだと考えると、ちょっと長めのエピローグととらえられないこともないですが、なんせ、物語自体が220ページくらいしかありませんので、40数ページでもまだまだ残っている感じなのですw

非常に技巧的なことですし、どちらかというと読む側の姿勢の方が問題なのかもしれませんが、やはり物語である以上、読む側が無意識に期待する流れというものもあるでしょうし。水戸黄門でいうと、40分くらいで印籠を出してあっさりすぎる事件解決! でも20分残ってるし何かあるのか? と思ったらあとは20分延々由美かおるの入浴シーンだったみたいな……ちょっと違う気がいたしますな。

ラストの方の多々良、鬼、狐、や地名の謎もうまく安倍晴明の話に繋がっているので、それなら事件解決ももう少し効果的に引っ張っていただけると、より心地よい驚きがあったように思います。

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