白兎が歌った蜃気楼 薬屋探偵妖綺談(高里椎奈)

書籍情報

著者 : 高里椎奈
発行元 : 講談社
新書版発行 : 2001.2 講談社ノベルス
文庫版発行 : 2007.4 講談社文庫

落ち着いた好青年座木(くらき・通称 ザキ)、超美少年の深山木秋(ふかやまきあき・通称 秋)、赤毛で元気いっぱいな少年リベザルが営む「深山木薬店」を舞台にした「薬屋探偵妖綺談」シリーズの第5作。

屋敷に取り憑いた「何か」を祓うために、四国にある雪浜屋敷に赴いた一行が巻き込まれる事件。ここまでのシリーズ中でも本格ミステリ度が高い作品。

こんな人にお薦め

  • 入り組んだ事件にじっくり取り組みたいあなた
  • 薬屋探偵妖綺談シリーズで本格ミステリ度の高い作品をお探しのあなた

あらすじ

以下新書版裏表紙より引用

真冬の雪浜家。屋敷内の不穏な空気に、依頼を受けて訪れた、深山木秋、座木(くらき)、リベザルが見たものは?

涸井戸の出火が口火となり、雪浜家の人間に次々と襲いかかる殺意。しかし秋には、殺意の目的が見えてこない。村人が信じる“座敷童子伝説”は、フェイクなのか? 手がかりか?

心を震わす、シリーズ第6弾!

以上引用終わり

書評

薬屋探偵妖綺談シリーズにしては異色の本格ミステリ度!

薬屋探偵妖綺談シリーズといえば、そもそも主人公の三人組が正体を隠した妖怪だということもあり、本格ミステリとファンタジーの融合的色合いが濃いシリーズです。それがシリーズが進むにつれどんどん本格ミステリ度は下がり、、前作「緑陰の雨 灼けた月」の書評では、もうこのシリーズをミステリとして評するのはやめようか、と書いたくらいでした。

そんな中で今回読ませていただいた本作。いきなりど真ん中の本格ミステリに回帰した感じです。

四国にある雪浜家の屋敷。そこを秋達が訪れた理由こそ、「家に憑いてる何かを祓ってほしい」という、オカルト、ファンタジー的なものでしたが、冒頭に挿入された意気込み満々の屋敷の構造図からして、おや? と思わせるものがありました。

そんな期待の中、事件は雪浜屋敷の井戸から上がった火柱と共に始まります。

リベザルが事件前に屋敷内で出会った謎の少女、香乃子がこの事件で焼死するというなかなかに血なまぐさいこの事件から始まった事件は、当然のように連鎖してゆきます。あまり陰惨さを感じないシリーズながら、作品によってはこれまでも死人がたくさん出たことはあります。しかし、本作は(本格ミステリとして珍しいことではありませんが)屋敷に滞在する秋達のすぐ近くで次々と事件が起こるので、必然的に秋達も事件に対してストレートに関わるという点で、従来のシリーズ作品に比べても、事件とがっぷり四つの本格ミステリだと言えます。

さらに物語中盤からは、友人を奪った連続放火事件と見られる火事の謎を追う刑事・高遠と探偵・真鶴のコンビが登場。秋達とは全く違ったアプローチで事件に関わってきます。

全体的には、今までのシリーズ作品よりも、ミステリとしてのプロットが複雑(というより量がつまっている?)で、推理しながら読むためにはそれなりに集中して読まないといけない感じです。ただ、文章が原因かもしれませんが、色々つまりすぎて読みやすいとは言えないです。いろんな事件が起こりますが、ただ次々と事件が起こる感じで、物語としての抑揚にかけるといいましょうか。

また、これだけのプロットを持ちながら、秋が事件解決にたどり着く過程が一足飛びな描写ですので、肝心の謎解き部分が、ただ結果を読んでいるだけという印象で、せっかくの伏線も意味はあるのに、あまり読者を驚かせる機能として働いていないような感じです。だからどんでん返しもアイデアは悪くないのに、読んでいて驚けない。少々もったいないような気がします。

この作品は今まで述べたように、人物よりも純粋にミステリとして読ませるものになっていますので、特に本格ミステリ的要素を求める方ならば、最低限の登場人物の設定さえわかった上で(どれか一冊くらい今までの作品を読んだ上で)シリーズものながら、いきなりこの作品を読んでも良いとも言えます。

ただし、今までの作品では、とかくキャラ優先の、ラノベ的色合いが強かった感がありますが、それがあるからこそ本作が人物よりも事件にクローズアップした作品として書かれていても、今までの物語で描かれてきた秋達登場人物の魅力がバックボーンとして機能して、彼らに十分な魅力を感じることができました。そう考えると、やはり順番に読んだ方が良いでしょうし、正直ながら、キャラの魅力を含めてならお薦めできるとワタシは感じます。

高里先生の文章は情趣ゆたかな物語だととても読みやすく、また良い雰囲気に包まれているのに、どうもミステリ的な、即ち理論を読ませるタイプの文章はそれほどお得意でないのかも知れないですね。もちろん、このあともたくさん作品を発表されている高里先生ですので、ワタクシのこの評価は、あくまでもここまでのシリーズ作品を読んだものであることをお断りしておきます。

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