ゲーム情報
メーカー : 5pb. / ニトロプラス
Xbox360版 発売日 : 2009.10
Windows版 発売日 : 2010.8
ジャンル : 想定科学ADV
5pb.とニトロプラスのコラボによる科学ADVシリーズ第二弾。前作「CHAOS;HEAD」ともつながりのある世界観だが、本作からプレイしても何も問題はない。いわゆるタイムトラベルものの物語で、ゲームのタイプとしてはループものに属する。
当初Xbox360版のみの発売だったが、口コミで評判を上げ、名作の地位を不動のものとした後、Windows版が発売される。2010年10月現在、アニメ化の企画も進行中である。
Story
公式サイトより引用
岡部倫太郎――通称オカリン――は、いまだ厨二病から抜け出せない大学生。
自称「狂気のマッドサイエンティスト・鳳凰院凶真」を名乗り、「未来ガジェット研究所」という、メンバーわずか3人だけのサークルでヘンテコな発明をする日々を送っていた。
そんな彼らがある時偶然から過去へと電子メールを送れる発明品、即ち「タイムマシン」を生み出してしまう――
SERN、ジョン・タイター、幻のレトロPC「IBN5100」、タイムマシン、バタフライ効果、タイムトラベルにおける11の理論――
いくつもの要因が偶然に重なり合ったとき、秋葉原から巻き起こる世界規模の大事件!
”未来への選択”を委ねられたオカリン達が下す決断とは?
以上引用終わり
こんな人にお薦め
- 科学理論とかのうんちくが好きなあなた
- 単なる萌えゲーには飽き飽きなあなた
独断の評価
評価はあくまでも独断です。当然、発売年代も考慮しています。
SからEまでの6段階評価です
グラフィック | A | huke氏によるキャラ絵は個性たっぷりで、ただのギャルゲではないことが一目瞭然。背景もアキバのリアルな風景が丁寧に書き込まれており、それだけでもひとつの見所。 |
音楽 | A | やっぱいとうかなこはカッコイイよねぇ。BGMも雰囲気にぴったりマッチ。 |
システム | B+ | 携帯電話のインターフェイスを利用した「フォントリガーシステム」は、改良の余地はあるもののとにかく斬新。これだけでAランクの価値はある。ただし、Win版の初期のバグなどはいただけない。特に既読スキップがうまく動作しないってダメだろ。 |
キャラ | S | 萌えオタ層以外の層にアピールする戦略をとりながら、舞台となるアキバを体現するようなキャラをあえてふんだんに配置したセンスは素晴らしい。とりあえず紅莉栖最強。 |
ハマリ度 | A | 難解なタイムマシン理論を躊躇なくプレイヤーにぶつけることで、プレイヤーもどっぷりとその世界に浸って解決方法を探求できるようになっている。ただし、基本一本道なので、繰り返しプレイによるやり混み要素は比較的少ない。伏線を見つける楽しみくらいか? |
オススメ度 | S | 前半は、オカリンの言動もかなりうざく、ダルの2ちゃん語の多様にも閉口するが、やるべき。ADV好きならやるべき。 |
備考 | ゲームを始める前にパッチを当ててver1.20にあげるべし! |
レビュー
(ほとんど)ネタバレなしのレビューです。
ようやくプレイできました! STEINS;GATE(シュタインズゲート)
噂に違わぬ大作でした。
ニトロプラスと5pbのコラボ作品と言うことで、非常にプレイしたかったものの、基本コンシューマーはやらないワタシは、さすがにこのためにXBOXを買うことはなかったのです。もちろん個人的には、まずPCで発売しやがれよ!! と何度も部屋の中心で叫んだものですが、結果的にはこの順番で成功だったのでしょう。
言ってみれば、XBoxというジャンルやプレイヤー層からしてアウェー感が否めないハードにおいてスマッシュヒットを飛ばしたことで、通常のギャルゲプレイヤー層とは異なる層にまでアピールできたのでしょうから。
タイムトラベルもの
さて、この物語、一口にいってしまうと「タイムトラベルもの」ということになるのですが、想定科学ADVと銘打たれているだけあって、現実に主張されているタイムトラベル理論をふんだんに盛り込まれており、いわゆる「SF」とは一線を画したものとなっています。
もっとも、だからといって実際できるのかと言われれば無理なわけですが、そのような科学理論だけでなく、舞台となる秋葉原の街や風俗もできる限り現実の風景を取り入れていることで「ホントにありそう」な印象を持たせてくれます。
また、タイムトラベル自体にも、過去にメールを(要はデジタルデータを)飛ばせる「Dメール」、記憶を過去の自分に飛ばせる「タイムリープ」、そして人間がそのまま時空移動できるタイムトラベルと、3つの種類を持たせ、偶然と研究によって少しずつその技術が進化していくところを見せることでも、物語的信憑性を持たせています。そして、それぞれの技術の持つ異なる特徴が、物語の構造自体を深いものにしていると言えるでしょう。
というわけで、前半はかなり科学的、技術的なお話がてんこ盛りです。雑学レベルでもいいので、量子論や相対性理論の知識があればかなり面白く読み進めることができるでしょう。もっとも、そのような知識がなくてもTipsで事細かく説明してくれるので、そのような知識がなくても問題はありません。
キャラクター
さて、キャラクターですが、厨二病患者・岡部倫太郎(真名:鳳凰院凶真、通称:オカリ )が率いる「未来ガジェット研究所」の面々と、その周囲の人達がメインキャラになるのですが。
オカリンうぜー!w
まあ、厨二病全開の言動自体はよいのです。絵を見る限りもう少し年上に見えてしまうのですが、なんと言ってもまだ大学一年生。こういうイタいやつもいるでしょう。が、とにかく行動が軽率すぎる。後半かなりな苦難を味わうことになるオカリンですが、作中自分自身で理解する通り、自業自得です。
もちろん主人公ですから、最終的にはものすごくカコエエのですが、前半はマジでウザかったw
で、そのオカリンの片腕のスーパーハカー(ハッカー)・ダルですが、この方もいい味出してるものの、その外見も言動も完全に一般的なキモオタを極端にしたような造形です。正直、リアルで見るこのタイプは、ホントにキモイと思う。彼は2ちゃん(ゲーム中では「@ちゃんねる」)用語を普段の会話の中にふんだんに盛り込んでくるわけですが、これもワタシの経験上、リアルでこれをされるとかなり鬱陶しいことこの上無しです。そこにシビれないし憧れない。
こんなどうしようもない二人がやっている「未来ガジェット研究所」の花が、椎名まゆりですが、この方もコスプレ制作担当のオタ娘で、ほえ~~っとした天然ちゃん担当です。まあ、可愛いは正義だから許します。
この三人が、物語開始時点での「未来ガジェット研究所」メンバー、通称ラボメンです。もちろんクセは強いしキャラは立ってますが、ワタシのこの説明を読んで、魅力を感じますか?
正常な方ならば、答えは「否」であろうと思います。
ここに、猫耳メイド・フェイリスに、美しき巫女であるところの男の娘・ルカ子(本名は、るか)も絡んでくるのですから、全くもってアキバ系の自己満足的ストーリーの様を呈して参ります。
が、そんなダメな流れをせき止めてくれるのが、本作のメインヒロイン・牧瀬紅莉栖です。女子高生ながら超天才の脳科学者。性格はいたって論理的で冷静……に見えて、愛すべきツンデレ。
かなりイイ! かなりイイよ!
ツンデレ破壊力では、家族計画の青葉様には及ばないものの、かえってそのストレートなツンデレっぷりが、初々しくてたまりませぬ。理性的な言動とは裏腹な、オカリンを凌ぐマッドサイエンティスト(実験大好きっ娘)ぷりもサイコーですな。
っていうか、紅莉栖がいなかったら、未来ガジェット研究所はただの厨二病施設からそもそも脱却できていなかったことでしょう。彼女がいて、はじめてストーリーが動き、あのどうしようもないラボメン達が輝きはじめるのです。
あと、メインどころでは、謎のバイト戦士・鈴羽や、これも謎のメール依存症の「閃光の指圧師」桐生萌郁(もえか)などがいらっしゃいますが、ネタバレ回避のため、詳しく書けません。ひとついうなら、鈴羽の衣装はちょっと分かり易すぎではないだろうか? ということ。さらにもひとついうなら、萌郁のメールアタックは正直かったるかったw
キャラ全体に言えることですが、hukeさんの書くキャラ絵がすっごい個性ですねぇ。もしかしたら、PCのギャルゲゲーマー層向けにはじめから作られていたら、違う方がキャラデザインすることになっていてもおかしくないような。でも、この画風で描かれるネコ耳メイド・フェイリスが、きっちり萌えキャラに仕上がっていることが意外でしたw
そして、本作も声優陣の演技がかなりよかったですね。
特にオカリン役の宮野さんは熱演でした。厨二病的台詞で包みつつもそこからあふれ出してしまう様々な感情や思いが、胸に刺さりました。また不思議だったのが、ルカ子役の小林ゆうさんです。前半○○だったときよりも、中盤△△になった時の方が○○っぽく聞こえてしまいました。ワタシの耳のせいかもしれませんがw
ストーリーについて
ストーリーについてですが……。
硬派ですし。結構ツライ。
ここでは詳細は述べませんが、要は軽はずみに歴史の流れをいじってしまったオカリンが、それを修復していく物語です。些細なことが大きく歴史を変えてしまうのですね。
これ自体はタイムトラベルもののSFではありきたり(というか、これなしでは成り立たないでしょう)なのですが、この物語では、その変えてしまった流れを如何にして元に戻すか、という科学的冒険活劇な要素に留まらず、「変わってしまった歴史の中に存在する人にとっては、それが真実」であり、「元に戻すと言うことは、その真実を消し去ることになる」ということを正面からとらえているところが素晴らしい。
この物語は基本一本道です。紅莉栖、まゆり以外の各ヒロイン達のEDはその一本道から、ちょっと寄り道する感じです。しかし、タイムトラベルものですから、その一本道の途中で何度も何度も行動をやり直すことで、一度失敗したことに対して違う分岐を探すことになります。そういう意味では、1つの物語の中で行動を繰り返すことになるループもののジャンルに入れることができるでしょう。
このジャンルも広義で見ると、すでに名作が数多く生まれており、古くはYU-NO、CROSS†CHANNELから近年では「スマガ」まで、いろいろな作品が思い浮かびますが、シュタインズ・ゲートでもシナリオ構成協力として参加されている下倉バイオ氏がシナリオを書いた「スマガ」と比べてみます。
「スマガ」の場合は主人公が死ぬことで、以前に覚醒した、目が覚めたところまで時間が巻戻る、という仕組みを取り入れることで、何度も人生(の一部)を繰り返してハッピーエンドを目指すストーリーでした。もちろん、やり直したからといって簡単にうまくいくわけではなく、何度も何度も、時には自殺してまでも同じ時をやり直します。この点に関しては、オカリンも同じようにあがき続けますので、似ていると言えるでしょう。
しかし、決定的に違うのは、やり直した結果消えることになる出来事の扱いです。
スマガでは、主人公のうんこマンは、戸惑いこそあれ、基本的には何度やり直してでも、ハッピーエンドを手に入れることが目的であり、まさにそこが作品全体のテーマと言えます。これはオカリンの目的「○○が○○ない世界に戻す」というものとある意味似ています。しかしオカリンは、その最大の目的を達成することを渇望しつつも、目的を目指すことで消してしまう物事や人の心を秤にかけ続けることを迫られます。
これはキツいですね。
失敗したら勝手に世界が巻戻るのではなく、自分の意思ですべての人の思いを、自分に心を開いてくれた人の思いを消し去ることを選択しなくてはならないのですから。
結局シュタインズ・ゲートは、この部分を深く掘り下げたゆえに、単なるSF風娯楽活劇ではなく、深い物語として賞賛を得たのではないでしょうか?
ワタシ自身は、徹底して娯楽に徹したスマガも大好きなのですが、やはりその物語の中で違和感を感じていたのが、時をやり直すごとに相対的に命の価値が下がっていくということでした。「やり直せるのなら、死んでもいいから、とりあえずいっとけ」的な。だから、オカリンが「やり直すことで失うものがある」ということから目を背けず、そこに悩み続けてくれていたことには好感が持てました。
ちなみに、先程も書いた通り、紅莉栖、まゆり以外のEDは基本的に一本道のストーリーの途中で外れてしまってたどり着く、いってみればIFストーリーのような感じです。ループものなのに、そこだけはループから外れてしまっている感じです。だから、あえていうなら必須ではありません。
もちろん、見た方がお得ではありますが、それにこだわって先に攻略サイトを見てしまうよりかは、まずは自分のチカラでラストまで行かれることをお薦めします。もっとも、その途中で各ヒロインのEDに突っ込んでしまうこともあると思いますが、それはよいのです。ただ、このゲームは全体を通して一種の謎解きのような要素もありますので、攻略情報を見るついでに、ネタバレ情報が先に入ってきてしまうと、非常にもったいないのです。まあ、そうはいっても、評判の高い作品だけに、いろんなサイトでお薦めとされている順番で攻略したいから、攻略サイトを見るという方も多いでしょう。
そんな方はこのサイトがお薦めです。
余計な情報はなく、攻略に必要な最低限の情報だけが掲載されています。
システム
システムはさすがですね。
バグがなければ一級品です。
なんかよく落ちるし、既読スキップはきかないし。(Ver.1.20アプデで修正されていますが、セーブデーターなどが消える)
まあ、それはおいといて、携帯電話を模したフォーントリガーシステムが特筆すべきところでしょう。物語に関係あるものから、どう考えても関係ないものまでいろんなメールや電話が来ます。時々邪魔なのもリアルですw
で、このシステム自体も斬新ですが、その使いどころというか効果が新しいのです。すなわち、メールを見る、もしくは見ないという行為自体がある種のトリガーになっていたり、一見なんの関係もないメールへの返信が重要な分岐の鍵となっていたりと、重要なところでいかにも重要そうな選択肢を選んでストーリーが分岐するという、この手のゲームの根本に手を加えたことが素晴らしく新しいことだと思います。もちろん、新しい分もう少し練り込んでいく余地はあるように感じましたが、それは今後に期待というところでしょうか?
また、他にもふんだんに表情差分を使った演出や、台詞の早さに会わせたテキスト表示など、徹底的にこだわったあとが見て取れます。ホントに売れて良かったと思います。
総括ってか買え!
とにかくシナリオも、絵も、音楽、システムもすべてが高いレベルで融合している作品です。
さすがにタイムトラベルに関する理論に基づく物語展開は、まだまだ矛盾をはらんだものとなっており、物語が進むにつれ理論が物語に対して都合のよいように妥協してくれている感じでした。しかし、これは身近に「想定できる」ように様々な現存する理論を詰め込んだからこそ避けられないものだったとも言えます。そこをぼかそうとするのなら、はじめからややこしい理論はなしで「偶然タイムマシンができてしまった! さあ、どうしよう!」で始まる物語にすればよいのです。そこを可能な限りリアルな表現にこだわった上で、ギリギリそれが破綻しないように、物語も面白く仕上げる……これは大変な仕事ですよ。
分かり易く極論でいえば、ドラえもんをタイムパラドックスとか、バタフライ理論とかの問題を踏まえ、理論的に破綻しないようにしながら、なおかつ面白く描けますか? ということです。(繰り返しますが、極論です。)
そう考えると、タイムトラベルの理論や問題点を全面的にプレイヤーに提示した上で、プレイヤーに違和感を持たせず面白いタイムトラベルものを描くというのが、どれほど大変か想像できるのではないでしょうか? だからこそ、ワタシは細かい矛盾点を突くことはやめて、素直に賞賛の拍手を送りたいと思うのです。
ADV好きは持ちろん、今までADV、ノベル系は敬遠していたあなたにもぜひプレイしていただきたいと思います。
ただ、実際Xboxソフトの感想を集めていらっしゃるサイトなどでは、酷評も見られます。濃いお話なので好き嫌いは当然あるものですから酷評自体はよいのですが、やはり普段ギャルゲをしないんだろうなぁと思われる方の書き込みの中では「ギャルゲ(美少女ゲーム)みたいでいやだ!」「登場する女の子がみんな主人公のことを好きになるなんてご都合主義過ぎる」的な感想もあり、残念に思いました。
だって、ギャルゲだしねぇ……w。
アンタそれは、名探偵の周りで毎回事件が起こるなんておかしい! ってがなってる人と同じだぜ?
確かにこの作品で、登場する女の子がみんなみんなオカリンのことを好きになる必要はないとは個人的に思いますが、やはり営業的なことやら色々考えると、そのギャルゲ的なお約束を外してしまうわけにも行かないのでしょう。そして、あえて通常のギャルゲのターゲット層を外した戦略で切り込んでいった作品なので、このような批判もやむなしというところでしょうか?
でも、そんな声もある中、今までこの手のゲームに見向きもしなかった層の目を惹きつけたことは間違いありません。
だからこそ次の作品が重要です。
そうして、一般のゲーマーがギャルゲ的なものに対する偏見をもっとなくしてくれれば、マーケットの裾野も広がって、イイものならエロなしでも売れるようになると思うのですよ。
フゥーハハハ!それこそが俺の望んだ世界なり!
エル・プサイ・コングルゥ。
やべぇ。影響受けてるよ。
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