月は幽咽のデバイス The Sound Walks When the Moon Talks(森博嗣)

書籍情報

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著者 : 森博嗣
発行元 : 講談社
新書版発行 : 2000.1 講談社ノベルス
文庫版発行 : 2003.3 講談社文庫

瀬在丸紅子・保呂草潤平・小鳥遊練無・香具山紫子の4人組が事件に挑むVシリーズ第3作。

保呂草たちがパーティに招かれた薔薇屋敷と呼ばれる豪邸で起こる凄惨な密室殺人事件の謎に迫る。

前作から登場の祖父江七夏、森川素直もすっかり定着の感。

こんな人にお薦め

  • れんちゃんファンのあなた
  • ストレートな謎解きが好きなあなた

あらすじ

以下文庫版裏表紙より引用

美しい館にひそむオオカミ男の犯罪か!?

薔薇屋敷あるいは月夜邸と呼ばれるその屋敷には、オオカミ男が出るという奇妙な噂があった。

瀬在丸紅子(せざいまるべにこ)たちが出席したパーティの最中、衣服も引き裂かれた凄惨な死体が、オーディオ・ルームで発見された。現場は内側から施錠された密室で、床一面に血が飛散していた。

紅子が看破した事件 の意外な真相とは!?

以上引用終わり

書評

シリーズとして落ち着いてきた第三作

第一作「黒猫の三角」ではシリーズ冒頭ならではの大アクロバティックを見せ、第二作「黒猫の三角」で森川素直、祖父江七夏というシリーズに欠かせない人物が登場。これでようやく準備が整った感のあるVシリーズ第三作となる本作品は、キャラ付けが前作までで完了しているからか、森先生らしい断片的でウィットに富んだ会話や言葉に満ちた作品となっています。

特に保呂草&紅子、紅子&七夏の大人同士のやりとりがとてもハイセンスで、れんちゃん&しこさんが前作までよりも子どもっぽく感じられました。特に紅子&七夏は前作では結構露骨にやり合っていたのが、ちょっとした仕草の描写や、交わした言葉で複雑な感情を連想させる感じのやりとりになっており、林という男性を挟んだ鍔迫り合いにもかかわらず、それすらも知的遊戯の一種に見えてしまうクールさです。

七夏は紅子のことを素直に綺麗だと思った。
そして同時に、とても憂鬱になった。

「私が貴女に嘘をつかないとでも思ってるわけ?」
紅子は口を斜めにする。「ばっかじゃないの?」

もちろん保呂草&紅子のやりとりも、お互いに理解しているようで、探り合っているようで、仲がよいようで、天敵同士のようで、飽きさせません。紅子は保呂草をここぞというところではきっちりはねのけますが、単純に嫌っているというのとは違うでしょう。保呂草は紅子を口説くような言動を見せるし、明らかに女性としての紅子の魅力を感じているものの、それも単なる恋愛感情ではなく、瀬在丸紅子という人間の深遠を覗こうとする好奇心であるようにも思えます。

「貴方はね、私の飲んだお酒のお代を支払う。そのために地球にいるの。それを忘れないでほしい」

それでも本作はれんちゃんファンにもお薦めです。少年探偵団のように無邪気に、殺人事件のあった館をしこさんと一緒に探検しまくり、後半にはちゃんと見せ場も用意されていますので、お楽しみに。

ミステリとしては、トリックについては物理系、とだけ言っておきましょう。事件全体としてみれば、事件そのものは密室殺人であるものの、館が閉ざされていたわけでもないのでそれなりに登場人物の動きがあり、本来ならハウダニットだけでなく、フーダニットにも重点を置けそうな展開ですが、この作品の場合は結局ハウダニットに謎が集約されておりますので、密室ものとして読むのが自然かな、と思います。

正直真相は、トリックは理解できたものの、もうひとつしっくり来ない印象でした。物事論理で割り切れることばかりでない、という感じかな。

もちろんそれは真実なのかもしれないのですが、ミステリとして読んでいる身からすると、やはり人の心についてもある程度、論理的な解決を見せていただきたいというのが本当のところです。

物語、というより保呂草たちの観察記録としては楽しめましたが、ミステリとしてはそれほど重厚な感じはありませんでした。でも、気軽に謎解きを楽しみたい気分の時には案外ちょうど良いものなのかもしれませんね?

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