46番目の密室(有栖川有栖)

書籍情報

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著者 : 有栖川有栖
発行元 : 講談社
新書版発行 : 1992.3 講談社ノベルス
文庫版発行 : 1995.3 講談社文庫

火村助教授が活躍する、作家アリスシリーズの第一作。

被害者は密室ミステリの大家が、ミステリ作家、編集者などが集まった屋敷で密室殺人の被害者となる、本格ミステリ度が濃密な作品。

こんな人にお薦め

  • ロジカルな謎解きが好きなあなた
  • 火村先生の入門編をお探しのあなた
  • 天上の推理小説が読んでみたいあなた

あらすじ

以下文庫版裏表紙より引用

45の密室トリックを発表した推理小説の大家、真壁聖一が殺された。

密室と化した地下の書庫の暖炉に上半身を突っ込むという悲惨な姿であった。
彼は自分の考えた46番目の密室トリックで殺されたのか?

推理作家・有栖川有栖とその友人で犯罪学者・火村英生のコンビが怪事件の謎に迫る!
新本格推理小説。

以上引用終わり

書評

天上の推理小説とは?

被害者は45の密室トリックを発表してきた推理小説の大家、真壁聖一。
もちろん事件は密室殺人。
それも使われたのは、真壁聖一の未発表の46番目の密室トリックなのか?

有栖川先生のミステリー愛はもちろんのこと、密室愛の深さが伺える作品です。
発表が92年ということで、有栖川先生の作品群の中でも比較的初期の作品ですが、作家アリスシリーズの第一作品でもあります。

先に発表されている、学生アリスシリーズに比べて純粋なミステリ的な雰囲気が強いです。
それでも、改めて今回読み返すと、火村先生が実に丁寧に描写されていますね。
単に人物描写というよりも、フィールドワーク(捜査)に臨むポリシーだとか、過去をほのめかす発言だったりとか、とにかく魅力ある人物に仕上げようとする 意気込みが満載で、これから長く続いていってほしいという、新シリーズにかける意気込みが伝わってくるようです。

物語としては、シーズンオフの別荘地にある真壁聖一の屋敷で、集まった人々は推理作家真壁氏に近い、推理作家、編集者、そして近親者。
そんなありきたりながらもミステリファンには心地よい舞台設定にプラスして、起こる事件は密室殺人。

でも、単なる密室トリックを解けば終わりの物語にはならないのが、日本のエラリークイーンとも評される有栖川先生の作品です。

冒頭から張られた過去の事件の伏線。
事件の直前に立て続けに起こった宿泊者達に対する悪質な悪戯。
事件に前後して家の周りに出没する、火傷跡の男。
そして、事件の直前に真壁が発表した衝撃の事実――密室ものはあと一作しか書かない、目指すのは「天上の推理小説」

見事にいろんな風呂敷を広げて見せます。

当然、最後にはその風呂敷をたたむわけですが、個々の伏線に仕込まれた謎自体はそれほど複雑なものではありません。
しかし、それを細かく、そしてロジカルに結びつける手法の鮮やかさこそが有栖川先生の真骨頂です。

これは月光ゲームから続く有栖川先生らしさとやはり同質のものでした。

結果「46番目の密室」というタイトル、密室の大家が密室で殺される、という状況にもかかわらず、読んでいてあまり「コテコテの密室もの」という印象を感じずに読むことが出来る作品に仕上がっているようです。

それにしても、火村先生。
ちょっとかっこつけ過ぎな発言はあるものの、最近の火村先生ほど、読者の期待に応え過ぎな言動をとらないので(シリーズ第一作だから当たり前ですが)新鮮でよろしいです。

まあ、人気シリーズほど、どうしても読者の期待を意識した「狙った」書き方にならざるを得なくなると思うのですが、やはり火村 先生のようなクールなタイプの場合、例えば「秘められた優しさ」とかいった類の性格は、さりげなく表現されていてこその、隠された魅力だと思うんですよ ね~。

久々に再読しましたが、やっぱり謎に満ちた構成、それでも読みやすく情感溢れる文体で綴られる物語には、やはり魅了されざるを得ませんでした。


以下、ネタバレありです。未読の方はご注意を


最後の動機の落ちは、まあうまいといえばうまいけど、なんだか有栖川先生らしいと思うのはワタシだけ?

あと、天上の推理小説。
無かったのなら仕方ないのですが、実際にその価値があると思われる作品が存在していた……という設定なのに、それを読んだ登場人物が「なんて素晴らしいんだ!」というだけ言って、読者になんの説明もなく終わるのはズルイっす!

仕方ないんですけどねw

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